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その後の日々 『執事レッスン』 2

「今日はテツさんとずっと外で働きたい」 「駄目だ。今日は紅茶の淹れ方を教えると瑠衣が話していたぞ」 「……だが」 「執事の仕事も頑張ると言ったのは、お前だろう」 「それはそうだが……こんなにややっこしいとは」 「まぁ頑張れ。午後、様子を見に行くよ」 「……う、分かったよ」  朝、部屋を出る時、少し押し問答してしまった。  最近の桂人は自由になった反動なのか、自由奔放だ。でもそんな彼にチュッと短いキスをしてやると、途端に静かになるのが可愛いと思う。  まだ不服そうな桂人を瑠衣に預け、俺は朝からひとりで庭仕事に没頭してた。 「テツさん、僕が手伝いましょうか」  そこに柊一がふらりとやってきた。どうやら彼もまた手持無沙汰のようだ。既に庭仕事用の準備と整えていた。柊一はラフな服装だと年よりずっと若く見え、まだ少年のように華奢だ。  強く抱いたら壊してしまいそうだな。  海里さんはこの細い躰を抱く時、折れそうで怖くないのか。  俺としたことが、つい邪な事を考えてしまった。というのも、桂人と躰を重ねるようになったせいだ。今の俺は、桂人の細身だが引き締まった躰の虜になっているといっても過言ではない。 「あの、どうしました?」 「あ、いや何でもない。手伝ってくれ」 「はい! 」  こんな妄想をしていると柊一にバレたら大変だ。海里さんにバレたら、もっと大変だ。あの人はとにかく執念深いからな。『柊一に日焼けさせるな、怪我させるな』と、とにかく過保護過ぎる節がある。 「ここにチャペルを再現するのですね」  秘密の庭園には元々『ガーデンチャペル』があったが、雷と嵐で朽ちてしまった。だから今回、秘密の庭園内の整備と共に小さな教会を再築することになった。今朝も朝から、そのための作業をしていた。 「あぁ前と同じとはいかないが、この庭によく似合うだろうな」  イングリッシュガーデンでよく見かける美しいフォルムの東屋を、チャペルに改装する予定だ。白薔薇が咲く季節には、最高のロケーションとなるだろう。  この先巡っていく季節を、桂人と一緒に見られるのが嬉しい。  一仕事終え、休憩しにリビングに入ると、瑠衣と桂人とアーサーと雪也くんが、ソファで団欒していた。 「あ、テツさん! 」  桂人が俺を見てホッとした様子で近づいてくる。 「桂人、ちゃんとやっているか」 「……肩が凝る。午後はテツさんの仕事の手伝いをしたい」    また子供みたいに口を尖らせて訴えてくるから、苦笑してしまう。 「瑠衣、いいか」 「あぁいいよ。僕も……もう疲労困憊だ」 「本当か!」  俺より先にアーサーさんが意気揚々と答えていた。  全く、こっちも手持無沙汰か。 「そうだ。瑠衣の指導の成果を見せて欲しいな。ケイトさんがいれた紅茶を飲みたいです」  柊一が明るく言うと、アーサーさんと瑠衣が顔色を変え「よせ!よせ!」と言っている。  なんだ? 俺の桂人のいれた紅茶が飲めないっていうのか。  まぁもちろん、柊一はそれを理由に断るような野暮なことはしない。 「大丈夫だよ。ケイトさん、お願いできますか」 「あぁ俺も飲みたい」  俺と柊一が依頼すると、桂人は満更でもないような表情を浮かべた。  どれどれ、レッスンの成果をみてやろう。  桂人は褒めれば伸びる男だ。  だから紅茶を飲みながら、沢山褒めてやりたい。

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