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その後の日々 『執事レッスン』 6

「アーサー、どうして誰も起きてこない? 」 「それは……そうだな」  キッチンで朝食の支度に勤しむ瑠衣に、真顔で問い詰められて、返事に窮した。  どうしてって、それは昨日の紅茶のせいだろう。  あれはまずかった。いやいや味だけでなく、飲んだメンバーが非常にまずかった。    おっと俺を抜かしてな。俺は精一杯頑張ったさ。一晩中眠れなかったが、瑠衣の安眠を優先させてやり、君の躰を守った。  瑠衣を無理矢理叩き起こして、襲いかかりたい、抱き潰したい……荒ぶる気持ちを必死に静め、修行僧のようにじっと我慢したのさ。(何度かひとりで抜いたが……) 「アーサー? 聞いている? 」 「あぁ、瑠衣はよく眠れたようだな」 「うん、一晩中目覚めなかったよ。あの、ありがとう」 「ん? 礼を言われるような事はしていないぜ? 」 「そうかな。君を我慢させたんじゃ……」 「ははっ、そんな心配無用だ。なぁ瑠衣、俺は品行方正な彼氏だろう? 」 「そうだね」  ニコッと微笑む瑠衣。優しい君が大好きだ。  それにしても、一番まずいのは誰だろう?   柊一も眠れなかっただろう? だが海里は飲んでない。海里にとっては喜ばしい事だったろう。いつもなら早々に眠ってしまう柊一がギンギンに目が冴えて状態で起きていてくれたのは、むしろ幸運だ。  すると……やっぱり一番まずいのはテツだな。アイツは紅茶をどくだみ茶と言うくらいだから、味覚がどこか変なのかも。いや庭の薬草をよく煎じて飲んでいるそうだから、躰の中であのお茶が恐ろしい効能に変化したんじゃ……だとしたら一番派手に抱き潰されたのは、紅茶を淹れた張本人の桂人というわけか。  くくっそれならば自業自得か、回り回って返ってきたのだから、しっかり受け止めたはずだ。テツのがっつく様子が目に浮かぶな。 「アーサー、流石にもうこんな時間だ。今日が休日といえども、これはまずい。皆の規律を正すために、今からモーニングティーを各部屋に届けてくるよ」  朝からパリッと黒いタキシードに白いシャツを着込んでいた瑠衣が、キリッと襟を正して宣言した。立派な執事の顔だな。 「そうだな。俺も手伝うよ」 「君が?」 「見てみたい! 」 「……何を?」  海里の得意げな顔はまぁ置いておこう。あそこは絶対に柊一がぐったりしているだろう。だから一番見たいのは、風来坊の桂人が抱き潰されて、どろどろになり脱力した姿かな。テツの精力には到底勝てなかっただろう。  あーしかし俺だけ少し寂しいぞ。ひとりで抜いたなんてさ。  瑠衣の後ろを歩いていると、彼が廊下で突然振り返った。 「な、何? 」  やましい心がバレたのかと、心配になるじゃないか。 「アーサー、手伝ってくれてありがとう。君にはあとでご褒美があるかもしれないよ」 「え? そうなのか。何だろうな」  途端にワクワクしてしまう。  俺の恋人は元執事。  飴と鞭を使い分けて、俺を蹂躙はしないが……たまに甘いご褒美で甘やかしてくれる、可愛い恋人だ。 「……君がとても好きなものだよ」 「くれるのか」 「もちろん」 「沢山欲しいよ。瑠衣」

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