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その後の日々 『執事レッスン』 8

「も、もう! アーサー、君は英国紳士だろう。人前で淫らな行為は控えてくれ」 「瑠衣……今、君がそれを言う?」  英国紳士たるものか。確かに俺はその一言に弱い。途端に従順な犬のように大人しくなってしまうのを知っていて放ったな。  あの日だってそうだった。おばあ様の館でイースターエッグハントをした夜、英国紳士としての理性を保ちすぎて失敗したんだ。  あの夜、君を思い切って一気に最後まで抱いてしまえば……その後大きな回り道をしないで済んだのでは。今更だが、後悔しているよ。 「と、ともかくここでは大人しくしていて。さもないと、ご褒美はないよ」 「えっ……分かったよ」  それは困るとシュンとすると、海里が俺の肩をポンポン叩いて笑っていた。    ふん、海里の奴は余裕の笑みだな。 「ははっ瑠衣は英国に渡ってから、アーサーを尻に敷いたのか」 「……海里……君も黙って」  瑠衣の声がぴしゃりと冷ややかだ。海里の顔も引きつった。 「ははは……瑠衣は相変わらず手厳しいな」 「ん……あの? 」  おや、俺たちが騒いでいると、お姫様がようやく目覚めたようだ。 「ん……海里さん、どこですか」 「あぁ起きたのか」 「はい……あの、傍に……」 「今、行くよ」  柊一はまだ寝惚けているようで、目を擦りながら手を探るように伸ばした。  そこにスッと海里が近寄り、柊一を優しく抱きしめる。  いい朝の光景だな。 「おはよう。腰は痛くない? 」 「少し……怠いです……海里さん、昨夜……す、凄かったですね」  おーい、柊一くんよ。  それって、俺たちがいるの知っての発言じゃないよな。  隣で様子を見守っていた瑠衣の頬も、みるみる染まっていく。 「昨夜の俺は、よかったかい?」 「あ……はい」 「ふっ嬉しいよ。そうだ、紅茶を飲むか」 「紅茶ですか。そうだ、瑠衣が淹れてくれた物を飲みたいので、起きて下に行きます」 「その必要はない。今朝はルームサービスで届いているからね」 「え? ま、まさか……っ」  そこで柊一がギョッとした表情で、顔を上げた。  Oh my God! 気の毒に…… 「る、瑠衣とアーサーさん? な、なんで……」 「あぁ柊一様、大丈夫ですよ。何も聞いておりませんから安心して下さい。さぁ温かいお紅茶を淹れましょう」 「う、うん」  嘘つけ、と思いつつ、流石長年の執事だ。主人に不安を感じさせない堂々とした対応に感心してしまった。 「それでは失礼します」 「ありがとう、瑠衣……」  柊一はまだ動揺しているようで、紅茶を飲む手が微かに震えて可哀想だったので、俺たちは早々に部屋を出た。    俺はご褒美を待つ犬のように、瑠衣の後を従順について歩く。  お次はテツ&桂人の部屋か。さてと、どんな光景が見られることやら。

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