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その後の日々 『別れと出発の時』 7
ルビーのピアスをつけた瑠衣は、ますます美人に見えた。
英国で再会してから、何度もつけてくれと頼んでいたのに、後生大事に宝石箱にしまったままで、渋っていたのだ。『執事たるもの、あるまじき行為だ』とか言ってさ……
だから、今朝の瑠衣の決断は、本当に嬉しかった。
左耳だけのピアスの意味が、またいいよな。
俺達は互いを守り合っている。
君は俺の精神的な支えだよ。
瑠衣の存在は、いつだって俺の力となる。
美しい秋の庭を眺めながら優雅に紅茶を飲んでいると、ドアがバタンと開いた。息を切らせて派手に登場したのはケイトだった。
「おはよう。ケイト」
しかし東洋人って、若く見えるよな。俺の瑠衣も、とても30代には見えないが、ケイトも20代には見えないな。頬を上気させ、いつもの和装ではなく、ジーンズに白いシャツ姿なので、今日はまるで少年のようだ。
おばあ様の話に出て来た庭師の少年は、今のケイトみたいだったのでは……そう思うと、ケイトとテツを、一度英国に連れて行きたくなるよ。おばあさまが元気なうちに会わせたくなる。
「おはよう! あれ? 瑠衣さんは、いないのか。いろいろ教えてもらおうと思ったのに……」
「あぁ、瑠衣は海里と出かけたよ。それよりお前の相棒はどうした?」
「テツさん? あぁ、まだ寝ているよ」
紅茶を吹きそうになった。
「おいおい、少しテツを労われよ」
「なんで? 」
「おまえが夜な夜な抱き潰してどうする? 」
「なっ、そんな……しつこいのはテツさんの方だ」
初心なケイトは顔を赤くして、そっぽを向いてしまう
「ふぅん、熱々でお盛んだな」
「えっ、そうなのか。これが普通だと思っていた」
「なぁ、お前たちって、一晩に何回くらいするんだ? 」
「……4-5回かな」
な、なんだって? 俺はルイとはそんなに出来ないぞ!
どんなに瑠衣が色っぽくて可愛くても、せいぜい2回がいいところだ。俺、枯れてんのか。心配になってきた。これはぜひもっと聞いておきたい。
もしや、なにかコツがあるのか。
「おい、どうして、テツはそんなに出来るんだ? 」
「さぁ……っていうか、変なこと聞くなよ。外人の方がそういう面では、タフなんだろ」
「む……っ、さてはテツはまた何か精力剤を飲んでいるんじゃないか」
「そういえば、いつも熱心に薬草茶を飲んでいる。あのせいかもね」
「いやいや、だが結局ケイトに勝てないんじゃ、意味はないような」
「ははっ、確かに」
瑠衣がいないのをいいことに、立ち入った話を聞いてしまった。なかなか受ける側の話をあからさまに聞けないので、いい機会だ。
「……アーサーさんは、随分、前のめりですね」
「あぁ!」
ん? この声って……
振り返ると、柊一が苦笑しながらポットを片手に、立っていた。
「あぁ悪い。不謹慎だったよな。こんな時に……」
「いえ、僕も気になります。その薬草のお茶とやら」
「そうか。柊一さんも海里さんに飲ませたいのか。じゃあ、テツさんに聞いておくよ」
「はは。頼むぜ。さーてと、そろそろ朝食にするか」
「はい、今日は僕が作りますよ」
「柊一さん、おれも手伝います」
海里と瑠衣がいないので、少し変わったメンバーで朝食を取ることになった。
「そういえば、さっき、こんな時に不謹慎って言っていたが、何かあったのか」
「あぁ……実は海里と瑠衣の父親が亡くなってな」
「……そうなのか」
ケイトの顔色が曇った。何か俺……まずい話をしたか。
「……ケイト、いい加減にテツを起こして来い」
「いやですよ」
「なんで? 」
「だって、今行くと……また抱かれる」
ぼそっとケイトが吐いた言葉に、柊一も俺も流石に頬を染めた。
「お前達……なんというか、ワイルドだな。がっついてんなぁ」
「アーサーさん、あの……はしたない言葉ですよ」
「すまん。瑠衣に怒られそうな」
思わず、首をすくめてしまった。
「くすっ、瑠衣もおとぎ話が好きだったので、騎士風がよろしいかと」
「あぁ本来の俺はそうだ、瑠衣の騎士だ」
「くすっ、はい。そうですよね。そうだ、アーサーさん、食事の後、案内したい場所があります」
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