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永遠の誓い 7

「寒い……寒いよ」  朝起きたら、テツさんの姿が見えなかった。庭に行っているのだろうと頭では分かっているが、どうにも不安でたまらない。一度知ってしまった優しい温床は、おれを駄目にする。  で、飛び起きて、庭に駆け出したのさ。   テツさんに触れて貰うと体温が一気に上昇し、今度は暑くて溜まらなくなった。テツさんがくれた水は薔薇の味がほのかにして、俺の体内をしっとりと濡らし冷やしてくれた。  白い朝日を浴びながら剥き出しの背中をテツさんに向けると、何ともいえない甘酸っぱい気持ちが駆け上がってくる。  朝からテツさんに欲情するなんて、恥ずかしい。  テツさんの手が俺の背中の鞭痕に触れると、古傷が疼いた。こんなに醜い背中なのに、テツさんが宝物のように触れてくれるから泣けてくる。  もっと綺麗な身体になりたい。  女でもあるまいし、そんなこと思うなんて阿呆だ。  そう思うのに……秘めやかな想いは止められない。 だから、おれは喜んで受け入れる。  海里さんの診察も、テツさんの薬湯や薬草のクリームも。 ****  テツに大輪の白薔薇を分けてもらい寝室に戻ると、柊一はまだぐっすりと布団に潜って眠っていた。俺が枕元に座っても目覚める気配がないので、サラサラな黒髪を、静かに指で梳いてやった。  昨夜も疲れさせてしまったな。  柊一と身体を重ねるようになってから気付いたのだが、柊一には、あまり体力がないようだ。だから朝まで抱き通すなど、激しいことは出来ない。また夜も早くから眠くなってしまうので、夜更かしも出来ない。  ストイックな性格が災いし、若い頃から根を詰めすぎたのだ。  特に両親が亡くなってからは自分を顧みず必死に走り続け、雪也くんを守って来たので、本来あるべき体力が根こそぎ奪われてしまったのだろう。  だから……俺たちの逢瀬は一回一回が大切で、有り難みを感じる至福の時となっている。  君の身体は清らかで、外科医として働いた疲労困憊の身体を浄化してくれる。 「柊一、もう大丈夫だ。君はもう一人で頑張らなくていいのだよ」  今日も君に魔法をかける。 「ん……、あ、海里さん? 先に起きていらしたのですか」 「可愛い寝顔だね。君に朝の贈り物をしたくて……先に起きていたよ」  俺は初夜の誓いのように、美しい大輪の白薔薇を差し出した。 「これを受け取ってくれないか」 「綺麗ですね。もう白薔薇がこんなに咲いて?」 「あぁ、だから俺たちの結婚式が近づいているのだよ」 「……海里さんのお誕生日にしましょう。僕はあの日が好きです。六月十日は時の記念日……僕らだけのおとぎ話が始まった日ですから」  薔薇を受け取った柊一が、甘く微笑んでくれる。  あまりに可愛らしくて、俺ももう一度布団入り、君を胸に抱きしめた。   「そうしよう。なぁ今日は外に出掛けないか」 「あの……でも、お仕事は?」 「今日は勤め先の創立記念日で休みなんだ。雪也くんは学校から芸術鑑賞で歌舞伎を観に行くらしいから、俺たちも銀座に行かないか」 「海里さんと銀座に? う、嬉しいです」  デートへの誘いを快諾してもらえ、安堵した。  俺たちの結婚式に相応しい衣装を、一緒に誂えに行くのだよ。  それは知らせるのは、着いてからのお楽しみにしよう。  

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