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永遠の誓い 16
目覚めると、いつの間にか車中から移動していた。
「海里さん?」
ここまでは海里さんに横抱きで連れて来られたようで、東屋のベンチで膝枕され、白薔薇の香りに包まれていた。
頭上に瞬くのは、僕の |Polaris《北極星》。
常に北の空にあって動かない明るい星、海里さん自身で、その横に雪也の顔が見えた。
「兄さま! お帰りなさい」
雪也が溌剌とした声で、僕を迎えてくれる。これは夢ではなく現実なのだ。僕の弟は病を克服し夢と希望に溢れている。そしてテツさんも桂人さんも、すっかり冬郷家の一員だ。
皆が皆……僕に魔法をかけてくれる。おとぎばなしのような夜をもたらせてくれる。
「柊一、起きられるかい?」
「はい、すみません」
「何を謝る?」
「かなり酔ってしまいました」
「ふっ……酔わせたのは俺だよ」
海里さんが檸檬水を飲ませて下さった。
「あっ、酸っぱい」
「どれ?」
「あぁ、蜂蜜を入れ忘れたようだね」
瑠衣はいつも少しだけ甘いエッセンスを加えてくれていた。
「厨房から持って来ようか」
「いいえ……甘いエッセンスなら、海里さんが持っています」
僕にしては大胆なことを告げると、海里先生が目を細め顔を近づけて
……ひとつ、ふたつ……続けて……甘い、甘いキスをとめどなく届けて下さった。
「ん……ふっ、あぁ……」
僕を白いブランケットで包み、ぎゅっと抱きしめながら海里さんが呟く。
「世界中の誰よりも君を愛している、柊一」
クラクラと僕を酔わす言葉が次から次へと降ってくるので、溜まらない。下半身が重苦しくなって困ってしまった。
「か……海里さん……熱いです。ここは暑いです」
「そうか……酔っ払っているせいだね。少し……シャツのボタンを外しても?」
「……はい」
「失礼するよ」
海里さんはいつも僕を恭しく扱い、触れてくれる。もうあんな怖い思いは二度としない。
「柊一は悪い子だね」
「え?」
「これは誘っているの?」
いつの間にか下半身を海里さんにこすりつけていたようで、恥ずかしくなった。
「ご、ごめんなさい」
「嬉しいよ。ここでいいのかい? 寒くははい?」
「はい……だから……」
自分から残りのボタンは外した。
「ここで……レッスンの続きをして下さい」
僕はシャツを開いて、海里さんに抱きついた。
「可愛い……とても可愛い。俺だけを慕い、俺だけを迎え入れてくれる君を愛しているよ」
啄まれるのは、僕の両胸の粒。
やがて海里さんの接吻は口以外の場所にもやってくる
ベルトを外されズボンを下げられ……生まれたままの姿にされても、もう間もなく季節は6月、少しも寒くはなかった。
「あ……んっ、ん……駄目です。声が……出ちゃう」
「大丈夫、もうみんな部屋に戻ったよ。聞こえない」
「ですが……んんっ」
「小鳥のさえずりだと思うよ。君の声は可愛いから」
「も、もう……駄目、出ちゃいます」
「一緒にいこう。いつも俺たちは一緒だ」
「ふっ……あっ、あぁ……」
この日、人生で初めて、 僕は屋外で最後まで抱かれた。
生まれたままの姿で、海里さんの身体の一部を迎え入れる行為は、神聖な儀式のようで、何も恥じるものではない。
夜空に瞬く星にも、吹き抜ける風にも、浮かぶ月にも見て欲しい。
僕たちの愛を重ねる姿を――
「心の準備は整った。六月十日は、俺たちの誓約の時だよ」
「はい……約束します。海里さんのお誕生日の祝福と共に」
季節は巡る。
やがて結婚式当日を迎える。
あとがき(不要な方は飛ばして下さい)
****
いよいよ結婚式当日です!
もうすぐ二度目の完結を迎えます。
最後まで甘い二人を応援して下さいね💓
おとぎ話シリーズは『ランドマーク』『鎮守の森』(エブリスタのみ)『まるでおとぎ話』の3本立てです。この話が終わっても、少しお休みいただいて、またいずれかの話の続きを書くと思います💓
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