435 / 505

大きな翼 2

「さぁ、開けてご覧」  海里先生に言われて封筒を開封すると、中からまた手紙が出てきた。  差出人を見ると『Arthur&Rui』と書かれていた。 「え?」 「手筈は整えたよ」 「え? 何のでしょうか」  何を言われているのか、咄嗟にはよく分からなかった。   「これは招待状だよ」 「え?」  僕は未だ訳が分からず、会話を上手に続けられない。 「可愛いね、そんなに驚いて」 「あの……何の招待状でしょうか」 「アーサーから連絡があってね、新しい会社を設立するそうだ。それでロンドンで設立パーティーをするから冬郷家の当主にも来て欲しいそうだ。もちろん俺もね」  それを聞いて慌てて開封すると、手紙と一緒に英国行きの航空券まで出てきた。  それは……僕が喉から手が出るほど欲しかったものだ。 「あの、これって本当に英国行きですか」 「そうだよ。俺と一緒にパーティーに出席しよう。休みを取ったよ」 「海里さん。こんなサプライズ……僕、驚いています」 「雪也くんの様子が気になるのだろう? ロンドンなら、様子を見に行けるだろう」 「嬉しいです」  僕は席を立って海里さんにふわりと抱きついた。 「嬉しいです! ありがとうございます。あなたが手筈を整え下さったのですね。海里さんはやっぱり僕の王子さまです」 「うん、柊一の夢を叶えてやりたくてね」    僕と海里さんの会話を、桂人さんとテツさんが和やかに見守ってくれていた。 「海里さん、柊一さん、お屋敷のお留守は、オレたちにお任せ下さい」 「あぁ、お前達がいてくれるから、安心だよ」  僕と海里さんは、あの空を駆ける船に乗れるのか。   「あの……僕は外国へ行くのは、実は初めてなんです。足手纏いになるかもしれません」 「柊一、そんなこと気にするな。君はいつも人のために生きてきた。それに、この旅行は俺たちの新婚旅行でもあるんだよ」 「あっ」 「柊一、俺と一緒に夢を叶えよう― Dreams come true!」 ****  英国 アーサーの祖母の屋敷 「瑠衣? ここにいたのか」 「あっ、アーサー、ごめんね」  瑠衣の姿が見えないので探すと、執務室の机で惚けており、手元には例のポストカードがあった。 「また見ていたのか。昨日届いた手紙を」 「……うん。これは特別な結婚報告カードだからね」 「どれ、俺にもまた見せてくれよ」 「ほら見て……この柊一さまの嬉しそうなお顔を」 「ははん、海里も蕩けそうな表情だな」 「どんなに素晴らしいお式だったのか、じわじわと伝わってくるよ」  写真は、柊一くんがウエディングベールを被り、はにかんだ笑顔を浮かべ、甘いマスクの海里がふわりと頬を寄せる……幸せの瞬間を切り取ったものだった。

ともだちにシェアしよう!