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大きな翼 16

「よう! 海里。よく来たな」 「アーサー! 元気そうだな」 「ありがとう。全部、瑠衣のお陰だ」  そこでようやく瑠衣と目が合う。  おいおい、眉間に深い皺が寄っているぞ~ 「瑠衣? 少し老けたな」 「な、何を言って! 海里、柊一さまはお派手なことが苦手なのに、君は悪目立ち過ぎだよ。柊一さま、さぁこちらへ」  瑠衣がとろけそうに優しい声で、柊一を呼ぶ。  柊一はその声にハッとして……恥ずかしそうに、瑠衣の方を向いた。 「瑠……衣! 瑠衣!」  やれやれ、10歳から柊一を育てた瑠衣には、敵わないか。  俺が降ろしてやると、柊一は自分の足でしっかりと立った。  そして再会の抱擁―― 「瑠衣、僕、来たよ……瑠衣が過ごしている国に……来られたよ!」  瑠衣は目を細めて、柊一を見つめていた。 「あぁ……飛行機は大丈夫でしたか。またご立派になられましたね。お会い出来て嬉しいです」 「瑠衣、瑠衣……会いたかった」 「柊一さま」  今度は暖かな抱擁。 「あ……」  瑠衣はその時、柊一の首筋のキスマークに気付いてしまったようだ。  怒られるかと冷や冷やしたが、瑠衣は無言で自分の首元に巻いていたストールを 、さっと柊一の首に巻いてくれた。流石元執事、スマートな手付きだ。 「瑠衣……いいの?」 「冬のロンドンはお寒いですから」 「ありがとう!」  すると今度はアーサーが瑠衣の首に、自分のマフラーをサッと巻いてやった。  何故だ? 目を懲らすと、瑠衣の首筋にも同じ痕があった。  アーサーがウィンクするので、俺は肩を竦めた。  どうやら俺とアーサーは似た者同士のようだ。 **** 「Yukiya!」 「あれ? ノアさん、どうしたんですか」 「今日はもう授業が終わったのだろう?」 「はい」 「今から我が家においで。せっかくの週末だ、泊まりにおいでよ」 「え? でも土日は図書館で勉強しようと思っていたのですが」  学校帰りの雪也くんを待ち伏せして、我が家に誘った。  兄から連絡があり、週末はロンドンの屋敷に連れてくるように言われていたから。 「……ノアさんのお誘いはとても嬉しいのですが、実はテストの追試もあるので」  そうか、追試か……英語の授業についていくのは、大変なのだろう。  流石に無理強いは出来なかった。 「そうか……残念だよ」 「申し訳ありません」 「でも追試が終わったら、おいで。何時でもいいから」 「行けたらいいのですが……頑張ります」 「あぁ、頑張れ!」    うーむ、どうも僕は押しが弱いな。    こんな時、兄だったら上手に誘いだすのだろうな。  よし、まずは兄に事情を伝えよう。  それにしても、兄が瑠衣と一緒にロンドンの屋敷に来るなんて珍しい。  雪也くん……最近、少しホームシック気味だから、瑠衣が励ましに来たのかもしれないな。      

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