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大きな翼 28
「瑠衣、嬉しいよ。どんな瑠衣も好きだけど、今日の瑠衣はもっと大好きだよ!」
「僕も今日の瑠衣は、とても近くに感じるよ。僕の大切な友人の瑠衣だ」
「あ……」
いつも敬語で話していたので慣れない。雪也さまと柊一さまを、どう呼べばいいのか分からない。何をどう喋ればよいのか分からなくて戸惑っていると、柊一さまと雪也さまが、優しく僕と手を繋いでくれた。
輪の中に入れてもらうと、自然と微笑みが生まれた。
「瑠衣、少しずつでいいから、もっともっと素の瑠衣を見せて欲しいな」
「う……承知いたしました」
「瑠衣、そうじゃなくて」
「……分かった」
あぁぁ、やはりこのような話し方は慣れないので、照れ臭く気恥ずかしい。
動揺する僕をアーサーが、後ろから、そっと抱きしめてくれた。
「瑠衣……君の可愛い部分、教えちゃうの? 俺だけの瑠衣なのに」
「おいおい、アーサー、もったいぶるな。瑠衣は俺には結構冷たいぜ」
どうやら、また海里とアーサーの掛け合いが始まったようだ。
もう――大人げない。
「瑠衣は時々、クールビューティーな面もあるからな。だが、それも溜まらない」
雪也さまが目を輝かせて、そこに参加する。
「ふふふ。アーサーさんの恋人自慢と、海里先生のブラコンっぷりが微笑ましいですね、ね、兄さま」
「コラッ、雪也ってば」
「雪也くんはすっかり元気だな」
「はい! こういうシチュエーションは僕の出番ですから」
「ははっ」
そんな和やかな雰囲気はユーリの一声で、また一変した。
「さぁ、そろそろ到着するぜ」
「え? 誰がですか」
「オレがここに呼んだんだ」
「一体……誰を?」
思い当たる節がないので、皆で顔を見合わせながら窓の外を見ると、黒塗りの重厚な車が停まり、中からローズピンクのドレス姿の女性が降りてきた。
「ああああ、あれは……おばあ様だ!」
海里が仰天した声を出す。
おばあ様といっても、アーサーのおばあ様ではない。
女性は東洋人の顔をしている。ということは……!
「ユーリ! なんで、ここに俺たちのおばあ様が」
「皆に会いたくて、遙々出て来られたのさ」
「驚いたな、もうご高齢なのに」
「なあに、この国の女性は元気で、90歳でもピンピンしているのを知っているだろう」
なんと……彼女は……海里のおばあ様なのか。
初めてお目にかかるはずなのに、どこか懐かしい。
どうして――そんな風に思ったのか、謎が解けるのに、時間はかからなかった。
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