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霧の浪漫旅行 30

「海里さんのお口に合いますか」 「あぁ、とても美味しいよ。柊一もしっかり食べないと」 「はい! 今日はとてもお腹が空いています。不思議ですね」  小首をあどけなく傾ける様子も、愛らしい。   「ふっ、それは昨夜よく運動したからな」 「えっ? 僕は運動なんてしていませんよ?」 「……君をたっぷり抱いた」 「!!」    軽くウインクすると、柊一が頬を染めた。  初心な柊一を、いつまでも見つめていたい。 「こんなにゆったりとした朝は久しぶりだな」 「はい、日本ではお仕事がありますから……そうだ……テツさんや桂人さんは元気でしょうか」 「あぁ、彼らも幸せな時間を過ごしているだろう。たまには二人きりもいいものだ」 「はい」 「柊一、ほら口を開けてご覧」 「あ、はい」  目を閉じて、口をそっと開く様子も可愛らしい。 デザートの苺を放り込んでやり、そのまま接吻した。 「んっ」  苺のジューシーな果汁が溢れ、唾液と絡み合う。 「甘酸っぱい口づけだね」 「あ……も、もう。海里さんは唐突過ぎます」  唇を赤く染めた柊一が目元も潤ませて、見つめてくる。 「もう少しベッドで戯れないか」 「あ……はい」  俺たちは午前中一杯、コテージの部屋に籠もって愛を語りあった。  こんな日があってもいいだろう。  こんな時間も大切だ。 「起きなくていいんですか」 「今日は俺たちにとっては休日だよ」 「でも、アーサーさんのおばあさまにご挨拶しないと」 「Afternoon teaに招待されているんだ。だからまだ大丈夫だよ」 「あ……はい」  柊一の身体は、脆い砂糖菓子のようだ。  強く抱けば折れてしまいそうになる。  強く吸えば真っ赤に腫れてしまう。  もどかしいといえば、もどかしい。  だがそれよりも愛おしさが増すから、不思議だ。  柊一の幸せが、俺の幸せだから成せることなのだろう。 **** 「瑠衣、いつまで窓にへばりついているんだ」 「二人は、まだ起きていないのかな?」 「コテージの煙突から煙が出ているから、もう起きてはいるのさ」 「そうか……なんだか複雑な心境だ」  柊一くんが10歳の時から成人するまで一緒にいたのだから、無理もない。  親心に似た心境なのだろうか。 「よし、気晴らしに少し散歩でもするか」 「うん!」 「可愛い返事だな。寒いから暖かくして」     グレーのコートに白いマフラーを巻いた瑠衣と、真冬のイングリッシュガーデンを 散歩する。  ここでは俺と瑠衣の仲はOPENなので、手袋はせずに瑠衣の手を握って、俺のコートの中に誘う。  寄り添って、冬のイングリッシュガーデンを気ままに散歩する。  冬咲きの薔薇を、二人で愛でる。  ひらひらと純白のドレスが舞うような『ウェディングドレス』 うっすらとピンクがのって咲く『アイスバーグ』 どれも上品でノーブル、瑠衣のための花だ。  四季を通して瑠衣を愛す、俺の気持ち。

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