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東竜太の独白1
俺には幼馴染がいた。
近所に住む、同い年の赤松佳人。そいつが俺の幼馴染。
身長は低めで線の細い、綺麗な顔をしたやつだった。それなのに言葉遣いは乱暴で、手癖も足癖も悪くて。他のどんなやつより男らしい、そんな男だった。
そんな佳人に俺は小さい頃から憧れていた。同時に負けたくもなくて、俺は勉強やスポーツを一生懸命練習した。
小学6年生の時に第二次性の検査があった。結果、俺はα。
Ωはよりよいαを獲得するために容姿が端麗であることが特徴で、男女問わず体の発育が他の性より劣るのだと、説明を受けた。
その説明を聞いて、俺は佳人のことだ、と思った。佳人はΩなんだと。
予想は的中していて、佳人はΩだった。
けどそれを知ったところで何が変わるわけでもなかった。
俺と佳人はこれからも幼馴染で、友達。周りの大人たちはαとΩが一緒にいる事を気にしていたが、余計なお世話だった。
俺はαである前に佳人の友達。友達に発情したりしない。もし万が一があったとしても、自分を押さえ込む自信があった。
その考えが甘かったと知ったのは、高校2年の秋。〝あの日〟のこと。
発情した佳人に争い切れず、俺は佳人と番になった。
最初こそなんとか自我を保っていた。俺は自分を抑えて、佳人に抑制剤を打とうとして。
『じゃあ、ともだちじゃ、なくていーよ』
佳人のその一言で、理性が崩壊した。
そうか、友達じゃないならセックスしていっか。
心のどこかで、俺がそう言った。
その一瞬の直後、俺を襲って来たのは後悔に後悔の嵐だった。
(俺、佳人と友達なのに)
(佳人は友達なのに、佳人とセックスしてる)
(やめたいやめたいやめたいやめたいやめたい!)
(佳人が泣いてる。苦しがってる)
(止まれ止まれ!)
(俺たちは友達なんだ!)
(佳人は友達なのに!)
(友達……なのに)
(友達なのに──犯したい)
(佳人の涎、甘い)
(佳人のナカ、俺に絡みついてきて気持ちいい)
(唇柔らかい──食いちぎりたい)
(涙でぐちゃぐちゃの顔、かわいい)
(かわいいかわいいかわいいかわいいかわいい──欲しい)
(このΩが欲しい!)
(この愛しいΩを俺のモノに、俺だけのモノにしたい!)
(孕ませたい)
(俺だけのΩ)
(愛しい愛しい、俺だけの──)
残酷な数時間だった。
たった数時間で、俺は10年来の友達を犯した。
たった数時間で、俺は友達を失い、番を手に入れた。
たった数時間で、十数年気付けなかった自分の欲望に気付かされた。
俺はこの男をずっとずっと昔から──犯したかったのだ。
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