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第45 籠の中の鳥 6

(いつの間に……) 眼光が明らかにさっきまでとは違っていた。 ギガイの強い視線に絡め取られて、緊張にきゅっと小さく喉が鳴る。そのまま視線が外せなかった。 二人の間に言葉は存在していない。ギガイの視線を受けながら、レフラもただその目を見つめていた。金がけぶる瞳の奥。琥珀がかった甘い茶色が深まっていくのを、逸らす事もできないままで。 もう一度ギガイの指が唇をなぞり、何かを促すように目が細まる。 はっきりと伝えられた訳ではない指示に、レフラは恐る恐る口を開いた。伸ばした舌は震えていた。ぴちゃっとギガイの指先にレフラの舌が絡みつき、濡らした蜜を舐め取っていく。 求められていた行為は、これで間違いなかったのだろう。レフラを見据えていた茶色の目が機嫌良さそうに細められ、口腔内へと差し込まれる。 さんざん後孔へ捻じ込まれて、太さを教え込まされた指だった。あの時の刺激を思い出し、レフラの身体が怯えに震えた。それでもレフラは抗うことなく、素直にその指を受け入れていく。 抵抗する事の愚かさを、何度もこの身体に教え込まれたのだ。この主から。『お前が望んだ事だ』という冷たい言葉と圧倒的な痛みと共に、身と心に刷り込まされた。 現に素直でさえいれば与えられたのは蜜だった。 「震えているな、怖いのか?」 耳元で問われた言葉にもレフラは素直に頷いた。 ここで変な意地を張れば、この主は何倍もの後悔を伴う仕打ちを与えるはずだ。 さんざん蹂躙された後孔も身体の奥も、ろくに身動きさえ取れないほどにまだ痛みを訴えている。そんな状態でもう一度行為に及ばれる事は、想像するだけでも辛かった。 いま口腔内に含まされている指がどこへ向かうのか。ギガイが考えている事が分からない。 まだ拡がっていない最奥に、もう一度ギガイのモノを受け入れる気概は持てなかった。 「素直なのは悪くない。これからもそうして居ろ」 耳朶に舌を這わされながら、吹き込まれる声音は優しい響きを持っていた。だがそんな優しい声のままで。 「お前だって痛い思いは嫌だろう」 囁かれた内容は、素直でなければ与えられる苦痛があるのだと教える残酷な言葉だった。 「ふっ、ぅあ……」 「言っただろ。お前を窮地へ追い込むのはお前自身だと。素直であれば問題ない。だから泣くな」 怯えで浮かんだ眦の涙へギガイの唇が寄せられる。そっと涙を吸い取る感触は、愛しむように優しかった。泣くなと宥める声さえ睦言でも囁いているようなのに。告げられた内容も、口腔内を我が物顔で動く指も、レフラの心を抉っていった。 膝の上で抱えられたレフラの身体に、ギガイの腕が回される。レフラの太股ほどはある腕だ。いつもなら軽く支えるような素振りでレフラの動きを封じるそれが、今日は本当に添えられているだけの様子だった。 身じろげば簡単に腕の囲いは外れるだろう。そして口腔内を蹂躙する、指からだって逃れる事はきっと容易い。 「どうした方が良いか、お前自身が決めるといい」 ギガイの舌がレフラの耳殻を辿っていく。耳穴に直接言葉が吹き込まれる。だが今のレフラには、拘束されていない事が怖かった。

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