64 / 382

第64 丸薬の一夜 14 ※

もうどれだけこうしているのだろう。 止める事も出来ないまま、擦り続けた固い茎はジンジンとした痛みを訴えていた。 初めこそ擦れた茎から得た刺激は、後孔の痒みも忘れさせるような強い快感を与えてくれた。だが、一度でも快感を得た身体は貪欲になる。刺激を得れば得るほどにますます疼きが強まっていき、それ以上の刺激を求めてヒクつく後孔の収縮でむしろ痒みは限界だった。 「かゆい、やあ、やだ、もう、やぁぁ、やめ、助けて」 我慢できない痒みから意識をどうにか逸らしたかった。その為にせめてもの刺激を求めてシーツに茎を擦りつける。だがその刺激がまた次の痒みを増していく。負の循環はこの苦痛が永遠に続くのではないかといった恐怖をレフラへ植え付けていた。 耐えきれない。これ以上は壊れてしまう。何回そうやって追い詰められたのかは分からない。それでも独りで耐えるしか無いレフラには、どれだけ限界に達していようと同じだった。 今はただ、聞き届けてくれる相手がいないと知りながらも、漏れる嬌声に懇願を乗せ続ける事が精一杯だった。それは献身な信者が祈りを捧げる様に似ていた。 気を失ってしまえれば良い。それでなければ、何も分からず快楽だけに浸れれば良い。そう思うのにレフラの意識は一向に途切れず、焼け切れそうな頭はまだ正常な思考さえも残している。 最後に確認した水銀時計は約束の二時間をあと少しで指す頃だった。でもいまだに扉は閉ざされたまま、ギガイが訪れる様子はない。 あとどれぐらい耐えれば良いのか。たった独りで。 沸騰しそうな脳みそと、堪えようのない身体の熱。その中に残る冷静な自分を捕らえるように、ひたひたと絶望感が染み込んでくる。苦痛を独りで耐え続ける状況は、日頃は忘れている孤独の痛みを簡単に呼び起こして苦しくなる。 心の内に広がっていく絶望から目を背けたかった。でも心の痛みから逃れるように身体に意識を向けてしまえば、身体を苛む終わらない快楽に泣きたくなる。ずっとずっとそんな自分の内の苦しみを耐えていた。だから、いつの間にか傍に来ていたギガイの気配に、レフラは全く気付かなかった。 「浅ましいな」 不意に聞こえた低い声に、レフラの身体がビクッと跳ねる。突然動きを止めた身体を相変わらず疼きは苛んでいた。それでも心と身体はやはり繋がっているのだろう。冷水を浴びせられたような言葉を理解した途端、血の気が引くような身体と共に、疼きもわずかに静まっていた。

ともだちにシェアしよう!