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第65 丸薬の一夜 15 ※
「確かに触るなと言ったが、擦りつけてイッても良いとも言わなかったがな」
あまりの痒みや疼きで理性の歯止めは効かなかった。だがその間も思考事態がバカになった訳ではない。疼く身体に負けてしまう、そんな行為の浅ましさは誰よりも理解している状態だった。そんなレフラにギガイの言葉が突き刺さる。
レフラの目から滂沱の涙が零れ落ち。蔑むような言葉がレフラを駆り立てた。
何か言わなくては。ギガイからの軽蔑を少しでも払拭できるような言葉を何か。そんな焦りがレフラの口を開かせた。
「ち、違うんです」
始めは触るつもりも自分で慰めるつもりもなかったのだ。その為にこうやって自分の身体だって拘束した。だから話しを聞いて欲しい。そんな縋る気持ちからの言葉だった。
「ほう、何が違うんだ。お前が一人で股間のモノを擦りつけて慰めていたように見えるんだがな」
だが、祈るように見上げるレフラへ向けられた目は過去に向けられた冷たいモノで、抱き寄せて貰える時に向けられるような暖かさはどこにも残っていなかった。
「…申し、わけ…ございません…」
恐怖に喉が引き攣って、声がまともに出せなかった。
(確かにそうだ。私が何と言おうとも、やった事には変わらないのに…)
またみっともない言い訳をしてしまった、と言葉を飲んだ。
「私は素直で良い御饌で居ろと言ったはずだが」
声音が一段と冷えていた。告げられた内容にレフラの身体がビクッと跳ねる。今の言い訳がますますギガイの不況を買った事は明らかだった。
ギガイの手が伸び、簡単にレフラの拘束を引き千切る。
「お前の為に急いだが、一人でどうにか出来そうだな。私は隣で休んでいる。あとしばらく一人でやっていろ」
そんな言葉だけを残して、ギガイがレフラへ背中を向けた。取り付く島もない態度で、捨て置かれる状況にレフラの感情が膨れ上がる。
それはずっと、ずっと耐えていた。孤独に対する絶望感だった。
来てくれると約束していた。だから苦しくてもレフラなりに必死な思いで耐えていた。苦しいと訴える誰かがそこにいなくても。孤独でしかなかった今までとは違うのだと。今日は主が来てくれる。そんな思いに縋っていた。
それなのに。居なくなってしまう。また独りになってしまう。ずっとずっと。今までも、これからも。結局、自分は独りで苦痛を耐えていくしかない。誰も自分の苦しみには寄り添ってはくれないのだ。
そんな絶望感が崩壊させた。
「いやぁぁ、いやです、やだ、行かないで、ギガイ様、お願い、お願いです、行かないで!!」
聞き届けて貰えるかは分からない。それでも遠ざかる背中に手を伸ばして、レフラは必死に訴えた。
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