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第99 陽光の中 15 ※
それは不思議な感覚だった。どこかいつも張り詰めていた心が柔らかく解けていって、代わりに甘い感情が入り込む。不安と多幸感が入り混じる、少し泣きたくなるような感覚だった。
その感覚のままに湧き上がった感情が、甘えなのか信頼なのか分からない。それでもそんなギガイに抱いた柔らかい感情のままにレフラはギガイの方へ顔を向けた。
嬉しかったり、辛かったり。振り回され続けたレフラの心はすでに限界ぎりぎりだったのだから。心の解れと共に、いつだって自分を必死に律して抑え込んでいたレフラの思いが零れ出す。
「意地悪です…優しくしてくれると言ったのに、ひどい……意地悪ばっかり、ひどいです……」
意図せずに吐き出してしまった内容にレフラはハッと口を押さえた。快感に回らない舌は甘い声音を持ったまま「ひどい、ひどい」とギガイを訴える声は責めるというよりはすねているような音だった。それでも。
(隷属の身で主の行為に口を出して良いはずがないのに…)
レフラが我に返った瞬間には、ギガイの動きもピタッと止まっていた。ギガイが何を思っているのか、どんな目を向けているのか不安になる。思わず俯きそうになったレフラの顎先を持ち上げて、ギガイが後ろの方から覆い被さるようにキスをした。行為の激しさに反した柔らかい口付け。その柔らかさに励まされるように、振り返ったレフラがこわごわとギガイの顔を見上げてみる。
「まあ、そう言うな。御饌であるお前に必要だと思っての事だ。ちゃんと終われば優しくする」
少し困ったように笑うギガイの顔がそこにはあった。予想もしていなかった表情がひどく愛おしくて、レフラの胸がフワフワと温かくなって、腹の奥がきゅんとうねる。
(ギガイ様のこんな表情が私にだけ向けられていたなら良いのに……)
脳裏を一瞬過った独占欲染みた感情が、自分にあった事にレフラは驚いた。
「まあ、前に伝えたようにお前の色香に煽られる所も有りはするが……それでも、頑張って応えてくれるだろう?」
レフラが否と言うなど思ってもいないのだろう。でも苦笑しながらそう言ってレフラの頬を撫でる手を、結局レフラ自身も拒めない。
覚悟を決めたようにレフラはコクンと頷いた。そうなってしまえばもう後には引けなくなる。でも困ったように笑うギガイへ愛おしさは積もっていく上に、頑張ればまた優しさが貰えるのだとギガイは言っていたのだ。
「…頑張ります…だから、終わったら……優しくして下さい……」
どちらにしても薄氷の上の幸せである事に変わりはないのかもしれない。それでも気まぐれに与えられていたであろう優しさが約束してもらえるのだから。
「ーーッ!あぁ、そうだな、約束しよう」
一瞬息を飲む音が聞こえてたのはなぜだろう。緊張と共に煮え立ちそうな頭では、理由は上手く考えられなかったがレフラにはもうその事に構っているだけの余力はなかった。気力を全て注ぎ込んで、震える脚を押し開く。視線の変わりに押し当てられたギガイの雄々しい指へ熟れた窄みを差し出した。
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