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第119 静寂の宮 8 ※
「…するんですか?」
「あぁ、抱く予定だ」
耳元で囁かれたその声にレフラがビクッと跳ね上がる。そのまま唇で触れるか触れないかのタッチで耳殻をなぞられれば、ゾワゾワとした甘い痺れが走っていく。その刺激にレフラの唇からは「あっ、あっ」と甘い声が短く何度も漏れていた。
「抱く時以外に意地悪くすれば、お前にひどいと責められてしまうからな」
「っぁ、意地悪を、するん、ですか」
耳殻に立てられた歯に声が思わず跳ね上がる。そのまま歯に力が籠もっていくのが不安だった。過去に受けた淫虐の辛さを思えば、フルッと身体も震えてしまう。だが触れた肌越しにその震えを感じとったのか、ギガイがフッと笑ってレフラの耳殻を解放した。
「あぁ」
「ど、どうしてですか?ギガイ様の不興をかいましたか?」
「不興ではない。だが私の腕の中だというのに、他の男へ笑っているお前に嫉妬した。お前は私の御饌なはずだ。だから私のモノだと確認させろ」
「そんな…」
「それにもうお前も辛いだけじゃないはずだ」
ギガイの指が上着の裾を払い除け、服の上からレフラの小さな茎を指先で上下に撫でてくる。不安でバクバクと心臓は早鐘のように鳴っているのに、キュンッと身体の奥が疼いた気がして思わず後ろに力を込めれば、後孔さえも濡れたような感覚がした。
「抱かれるのは嫌か?」
そんな身体の反応は、レフラよりもレフラの身体を細部まで知っているギガイには筒抜けなはずだ。それなのにレフラがハッキリと口に出すまでは動く気はないのだろう。
レフラはギガイの言葉へフルフルと首を振った。イヤじゃない。どんなに不安だったとしても、好きな相手に抱かれるのだからイヤな訳がなかった。それに素直にギガイからの快感を受け入れるようになった今では、身体は与えられる快感に貪欲になっていた
「お前の方から求めてみろ」
萎えないように弱い刺激を与え続けられながら命じられてしまえば、断る事も出来なくなる。レフラはコクリと唾を飲んだ。
「抱いて、ください」
言葉はまるで媚薬のように甘かった。自分自身の言葉だけで身体の奥にジンッとした痺れが走っていく。快感を覚えた身体の熱はずっと上がっていく一方だった。
言われるままにちゃんとおねだりをしてみたのに、指先だけの刺激を繰り返すギガイの愛撫は変わらなかった。ぐずぐずと溜まっていく熱に優しいだけの愛撫はもどかしい。そんな熱を耐えて、耐えて、耐えきれなくて。はしたない、と思いながらもハッキリとした快感を強請るように、思わず下半身をギガイの手に押しつけた。
それなのにスッと躱される掌にレフラはもう限界だった。
「やっ、ギガイ様、やだ、触って下さい」
「うん?こうやって触ってるだろう」
穏やかな声に合わせてギガイの爪先がカリカリとレフラの茎を掠めていく。ちゃんとお強請りだってしたのに、どうして触ってくれないのか。ヤダヤダと首を振るレフラの目が、快楽に煽られて涙が薄らと張っていく。
「ちがいます、やぁ、ぁぁ、カリカリやだぁ、ちゃんとさわってぇ、さわってください、っぁ」
限界まで湛えた涙がついに頬に流れ出す。その涙を口角をわずかに上げたギガイが舐めとり、ククッと笑う姿は楽しげだった。
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