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第163 揺れる足元 16 ※
隷属として嫁いで、身体を臣下の方へ開かれて。
意地を張った結果、買ってしまった不興の中で手酷く抱かれた始まりの時。
辛いことがありながらも、優しさをそれ以上に与えてもらえた。今では睦言のような言葉をいっぱい掛けてもらえて、抱き寄せてくれる腕はレフラの癒しになっている。
先日だって『こわい』と泣くレフラへ向けられた蜂蜜色の眼光や抱き締めてくれた腕は、優しくレフラの怯えを拭い去ってくれた。
初めてのあの日から1度も、こんな冷たい空気を向けられたりはしなかった。
「…も、申し訳、ございません……」
甘えが許されるような雰囲気なんてどこにもなく、緊張で口腔内が乾いていた。身体を震わせながら、振り返って謝罪をする。
「謝らなくていい」
赤い眼光が見下ろしてくる。レフラが1番苦手として、もう2度と遭遇したくなかった眼光だった。
「もう、遅い」
「やっ、ギガイさま、申し訳ございません、もう無茶なことはやりません!」
「反省してるのか?」
「は、い……」
コクコクと必死にレフラが頷く。
「そう思うのなら、素直に仕置きを受けろ。謝罪はその後に聞いてやる」
「ぁっ、ぁぁ……」
身体が再び返される。背後から抱き締められた身体ではギガイの表情が全く見えない状態だった。
こうやってあの日も一方的に嬲られて、ただただ泣くしかなかったのだ。記憶に重なるその姿勢がますますレフラの心を追い詰める。
直前に向けられていた赤い目は、それだけギガイの怒りの深さを物語っていた。
威圧を含んだ空気の冷たさも、淡々と感情を感じられない声も全てが怖かった。
(この前『こわい』と言えたのは、聞いてもらえるとどこかで思っていられたから……?)
どんなに怖いと思っても、甘えを許してもらえる事を知っていたからこそ言えたのだと。全てをなくした今になってレフラは初めて気が付いた。
今は『こわい』と訴えた先日以上に怖かった。
初めの日のように開かれる痛みを思えば、身は竦むだけだった。
だけど謝っても遅いのだと、すでに言われてしまっているのだから。もう謝罪の言葉も紡げなくなる。
でも仕置きを受ければ聞いてくれると言っていた。
あの日のように気を失うまで一方的に嬲られるのかもしれないのだと思えば、涙と嗚咽が止まらない。
その涙を優しく拭ってくれる指も、もう存在していなかった。
「…っふ、、ぅぅ……っぅ…しっ、おき、を、してくだ、さい……」
終わった後に聞いてくれるという謝罪が、受け入れてもらえるかどうかは分からないけど。それ以外に許してもらえそうな術がないのだから。
不安に心を戦かせながらもレフラは仕置きを懇願した。
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