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保護者同伴でごめんなさい 2

「ち、違うんです!! そうじゃないです! だからその方を処分されないでください!」 ギガイの腕の中に抱えられたまま、レフラが顔を青ざめてブンブンと激しく振っていた。 「それは私が判断する。そいつの名前はなんだ?」 「わ、分かりません!!」 レフラが不貞のような裏切りの行為をしているとは思わない。そういう事ができるような質でもなければ、自分もまたそれをされて気付かないほど愚かであるつもりはなかった。 それでも、そんな者を庇うのなら話は別だった。 「レフラ、下手に庇い立てすれば、お前も仕置きだが良いか」 「違うんです、本当に分からないんです!」 だけどもう1度、大きく首を振りながらギガイの服を握るレフラには嘘を吐いている様子はなかった。 「…どうやって出会ったんだ」 「出会ったというより、踏みつけました……」 「はっ?」 予想もしていなかった言葉にギガイの口から短い声が思わず漏れる。だけどその音を行為を咎めた音だとでも思ったのか、レフラはますます項垂れてしまっていた。 「ごめんなさい…あの時は必死で…」 「あの時とはいつだ?」 よほど答えにくいことなのだろう。ここまできて、レフラが言葉を詰まらせた。 「レフラ」 だが色々な意味を含ませて名前を呼んだギガイの声に、ようやく諦めたようだった。 「逃げ出してしまった時のことです……あの時は、本当にごめんなさい……」 声が不安そうに詫びる様子に、成るほど、とレフラが言い淀んでいた理由が分かる。 「あの事はもう良い。あれはお前だけのせいではないからな」 ギガイがレフラの頭をクシャリと撫でる。 「それで、踏んだというのはどういう事だ?」 頭を撫でる掌の感触に一瞬緩みかけたレフラの空気が、またピリッと強張った。 怯えさせている自分が言うのもおかしな話だとは分かっている。それでも、こんなに振り回されているレフラの心に不憫さを感じてしまう。 「怯えなくていい、大丈夫だ」 「……でも、ギガイ様に叱られそうです…」 「離れるマネや損なうマネをしなければ、叱ったりはせん」 「……でも、お相手がケガをしたと思います…」 「お前がケガをさせたのか?」 「……はい…」 跳び族のレフラはどう考えても戦闘向きではない。そんなレフラがケガを負わせた状況とは、いったいどういうことだろう。 「岩壁を登りきった先にいらっしゃった方で、ラクーシュ様達と同じ装備を身につけていらっしゃったので、同じ武官の方だと思います……」 「そうだな、同じ装備であれば警備隊の者だろう。その者相手にどうしたのだ?」 「お2人居て、前後を挟まれて道を塞がれてしまったので……」 「塞がれたから?」 「前に居た方の顔を踏んで、頭上を飛び越えたんですが、鼻骨に踵が当たってしまったんです……」 「それで骨が折れたかもしれない、ということか?」 「……はい…」 鼻骨は確かに折れやすい。踏み込む強さで踵が当たったのなら、折れていなくてもヒビ程度は入った可能性はあるだろう。 だが、そうだったとしても黒族の武官だ。仮に折れていたところで、その男の失態でしかない状況だった。

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