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保護者同伴でごめんなさい 3

「…黒族の方にケガをさせてしまって、ごめんなさい……その方にも申し訳なくて、直接謝りたいんです……」 ケガをした者だけではなく、ギガイ自身へもなぜ詫びるのか。『叱られそうだ』とも、思い返せば言っていた。 (なるほど、掟か……) 一瞬考えたギガイが思い至った理由に納得する。 前にレフラが傷付けられた時に紫族の族長代理だった男へ告げていた掟のことを気にしているのかもしれない。 だがレフラ以上に大切な者などいないギガイにとっては、そんな男のことなど瑣末(さまつ)なことだった。 「かまわん、そいつの事は放っておけ」 むしろ侵入者として取り押さえようとした者に、まんまと顔面を踏みつけられて逃げられるなど、マヌケとしか言えないのだ。 状況によっては、失態として処罰対象にだってなるような者だった。レフラが気にかける必要など全くない。むしろそんなことで、レフラが会いたいと望むことの方が、ギガイにとっては気に食わなかった。 「どうしてですか!?」 叱られるかも、と思っていたレフラにとっては想定外の言葉だったのだろう。 慌ててギガイの服を引っ張っていた。 「そんな事でケガを負ったのならマヌケにもほどがある。そんなやつをお前が気に病む必要はない」 「そ、そんな…もし私がケガをさせてしまったのなら、ちゃんと謝りたいんです! お願いします、ギガイ様!」 「……なら祭りの期間が終わった後に、上の執務室へ呼び寄せてやる。それまで待っていろ」 レフラの必死な様子と告げられた「お願い」という言葉にギガイが仕方ないと、せめてもの譲歩案を出してやる。 「ダ、ダメです! それでは私が謝ることにはなりません!」 だけど返ってきた応えに、ギガイが眉根を寄せて見せた。 「どういうことだ?」 「だってギガイ様がご一緒だったら、その方も何も言えません!」 その言葉にますますギガイが眉を顰めていった。 「お前だけを会わせろということか? 絶対にダメに決まっているだろ。会わせる時は私が同伴だ」 「だって黒族の方は皆さんギガイ様には逆らえないじゃないですか」 「当たり前だろ」 黒族の中で族長の言葉は絶対だった。逆らうなら即排除の対象なのは、民にとっても分かりきったことなのだ。 「だから、それじゃダメなんです…!」 ちょうどその時、開いたままだった扉からレフラのために書庫へ行っていたリラン、エルフィルが戻ってくる。 レフラの興奮した様子に何事か、と戸惑っているのだろう。残っていたラクーシュにススッと近付く様子が見えていた。 「なぜだ、それでもお前が直接詫びることはできるのだから同じだろう」 「同じじゃありません、お相手にとっては全く違います」 「それはそいつの問題であって、私が気にすることではない」 「もう! ギガイ様の分からず屋!」 焦れたように叫んだレフラの声に、ギガイを含めて部屋の中の者達が、思わず一斉に固まった。

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