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保護者同伴でごめんなさい 4

「それでは、ギガイ様の権威を、笠に着ているような状態なんです! 謝りに行って、そんなみっともないことを、したくないです! ギガイ様に比べたら、ちっぽけなプライドだとしても、私にだって矜持があるのに、どうして分かってくれないんですか!」 顔を紅くしてムクレながら、レフラの身体が暴れ出す。跳び族のレフラがいくら暴れたところで、ムダだと分かっているはずだった。そしてギガイがそうやって抗われることを、好ましく思わないことも、知っているはずなのだ。 それでも腕の中から逃れようとするのは、レフラが本気で機嫌を損ね始めたときの特徴だった。 「分かった、分かった。お前をないがしろにしたわけじゃない。落ち着け」 淫辱の日々の中でも折れなかった矜持だ。それを軽んじられるような状況にかなり悔しかったのだろう。それでも、重ねたギガイの過ちさえも『許します』と言ってのけた御饌なのだから。 「お前の矜持を傷付けるつもりはなかった、悪かった」 そうやって素直に詫びて見せれば。 「本当に? 本当にそう思ってますか?」 「あぁ、思っている」 「ちゃんと分かってくれたのなら、良いです…」 そう言ってギガイの腕の中で大人しくなったレフラに、こっそりとギガイが息を吐き出した。 「……だが、謝ったところで望み通りの結果が得られるとは限らないぞ。そうなればムダに傷付く可能性もあるだろう」 軽んじたのではなくて心配をしているのだ、と伝えるようにレフラの頬に手を添える。 特にギガイとしては捨て置いて良い相手なのだ。 そんな相手にレフラが傷付く可能性はほんのわずかでも存在させたくない。この言葉に考えを変えて欲しい、とギガイとしては思っていた。 「そうなったらギガイ様が慰めてくださるでしょう?」 だが、ギガイのその掌に頬を擦り寄せながら「だから大丈夫です!」と笑うレフラには、迷いは全く見えなかった。 「当然そうするが、お前が傷付くことは避けたいのだがな」 「それでも、卑怯者には成りたくありません」 絶対に意思を曲げる様子がないレフラにギガイが大きく溜息を吐き出していく。 日頃はろくにワガママも言わずに、ギガイを受け入れ癒してくれる御饌だった。そんな愛おしい番は、実は頑固で1度決めたらなかなか変えてはくれないのだ。 これまでの関わりで、それをさんざん痛感してきたのだから。ギガイは、仕方ない…と諦めた。 「おい」 不意にギガイの声音がガラリと変わる。それだけで誰に呼びかけているのか分かったのだろう。 黙って成り行きを見守っていた3人が、姿勢を正してギガイの方へと向き直る。 「今の話は聞いていたな」 「はい」 統制が取れた武官らしく、3人の声が1つに重なり合っていた。 「あの地区はどこの部隊の管轄だ?」 「第3小隊の管轄になります」 視線でリランへ問えば、即答が返ってくる。 「ではラクーシュお前の管轄だったところだな。明後日までにお前の後任の小隊長に該当の男を捜させろ」 「かしこまりました」 「見つかり次第、何か適当な理由で中の間の入口まで連れて来い」 ラクーシュが頭を下げて承った事を確認して、ギガイがもう一度大きく溜息を吐き出した。

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