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保護者同伴でごめんなさい 5

「ラクーシュ様! お久しぶりです!」 「あぁ、シュナルト。悪かったな、わざわざ」 レフラの知らない内にギガイによって人払いがされた通路には他には誰も居なかった。そのせいか、離れた位置からこちらに気が付いたかつての部下が、大きな声で挨拶をしながら手を振ってくる。 ラクーシュもその気さくなタイプの男に手を振り替えして合図をした。そんなラクーシュの後ろに立つレフラから緊張した雰囲気が漂っていた。 跳び族のレフラの身体は小柄なため、ラクーシュの陰に隠れてシュナルトからはまだ見えはしないだろう。 「レフラ様、あの男で間違いはないですか?」 背後に隠れているレフラへ小さな声で確認をすれば、ラクーシュの後ろから、少しだけ顔を覗かせたレフラの緊張が、よりいっそう増したようだった。 「はい、間違いないです……」 レフラから小さな返事が聞こえてくる。それと同時に。 「あっ、ラクーシュ様、あの方の前ではちゃんと“レフラ”と呼んで下さい。様付けはダメですよ」 「…はい、かしこまりました……」 「言葉遣いも、普通にお願いします」 その言葉にも頷いて返しながら、これから始まる状況を考えると手に汗が滲み始めていた。 (なんで俺の部下だったんだ…。こんな立ち回りはリランの方が上手いだろう……) 思っていたって仕方ない事だとは分かっている。それでもまた痛み始めた胃を掌で擦りながら、ラクーシュは思わずにはいられなかった。 「今日はどうしたんですか?」 そんな事を考えているうちに、シュナルトが近くまで辿り着いていた。 聞こえた声に後ろからビクッと跳ねるような気配を感じたかと思った瞬間、レフラがラクーシュの服をキュッと後ろから握ってくる。 この行為が、いつもギガイに抱えられていることが当たり前なせいで、完全に無自覚な行動だとは分かっている。 そもそも、いつものレフラを見ている限り誰かれかまわず甘えるようなタイプではないことも知っている。そうだとしても。 (後から俺はギガイ様に殺されるんじゃ……) あの主の不興を買わないか、といえば全く別なお話しなのだ。冗談無く、そんなことが心配になるような状況だった。 黒族の武官である以上は常に死も覚悟はしているつもりだが、こんな主君の痴情のもつれに巻き込まれるような死に方だけはしたくない。 (とりあえずそんな事態になればレフラ様が全力で庇ってくださるだろう……) しばらくレフラのそばを離れないようにしよう、と心に決めながら、さらに痛みを増していく胃をもう一度掌で擦っていた。 「いやな、俺の知り合いが、ちょっとお前に用があるらしくてな……」 「ラクーシュ様の知り合いですか?どのようなお知り合いですか?」 「……俺の知り合いの嫁さん、かな?」 「かな? ってなんですか」 アハハと笑うシュナルトに、ラクーシュが笑ってごまかしていく。だけど内心冷や汗ものでしかない状況なのだ。 (ギガイ様の御饌様だぞ! 知り合いの嫁とか、普通に言えるレベルかよ!!) そんな内心の叫び声を、引きつりかける笑顔の下でどうにか必死に飲み込んだ。

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