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第2 雨季の時期 2

「そうだな、少しは休むか」 「かしこまりました。新しいお茶を準備させましょう」 ギガイの言葉にアドフィルが、ベルを使って給仕を呼び、細やかな指示を出していた。その間にリュクトワスも、次の書類の整理なのか、右に左にと書類を分類しているようだった。 そうして出ていった給仕と入れ違いに、今度はいつもの3人が、新しい書類を持ってくる。 それぞれが自分の仕事を忙しくこなしているような状況なのだ。その中で何もせずにただ座り込んでいるのはレフラだけだった。 何の役にもたたずギガイのそばにいるだけの状況に、仕方がないと頭では分かっていながらも、気持ちはどうしても落ち込んでしまう。 「…私は本当になぜここにいるんでしょうか……?」 「どうした?」 そんなレフラの様子に気がついたのだろう。身体を掬い上げられて、膝の上に降ろされる。そのまま顔をのぞき込むギガイへ落ち込んだまま目線を向けた。 「皆さんがこれだけお忙しそうなのに、私だけがここでお役に立てていない……逆に執務のお邪魔でしょう? どうして私はここにいるのかと思ってしまいます……」 もしかしたら、数日前に寂しいと弱音を吐いたレフラのために、一緒にいる時間をどうにか作ってくれたのかもしれない。 だけど御饌として求められていることを考えれば、宮の中で大人しくギガイを待っていることが望ましいと分かっている。 それにこうやって1人座り込んでいる状況は、跳び族での日々を思い出して辛かった。 「私には、皆さんと違ってここで務めきれる役割もございませんから」 仲間に入れずに輪の外から眺めるしかなかった孤独の記憶はまだ心を痛ませる。そうなれば、レフラはそんな痛みをごまかすために小さく笑って返してしまうのだ。 「ほら、またそうやって笑って誤魔化すな。お前のその顔は好きではない。むしろ怒ってみせる方がまだマシだ」 ギガイの言葉に一瞬だけ黙り込む。これまで培われた生き方や振る舞い方は簡単には変えられない。でも何度も『私のためにも耐えるな』と望まれてきた状態なのだ。 「……だって、何度も “どうして” と聞いているのに、ちゃんと答えて下さらないのはギガイ様のほうです」 耐えることを止めて素直に告げてみる。 ギガイとレフラの日々のやりとりに慣れた3人やリュクトワスにとっては、特に驚いた様子はない。だけどこの場の中でアドフィルだけは、日頃レフラと馴染みがない臣下だった。 そんなアドフィルにとっては、ギガイへ反論するレフラの姿はやはり異質なのだろう。レフラの振る舞いにわずかに息を飲んで驚愕しているようだった。 ラクーシュ達3人が「これぐらいはいつものことですから」と苦笑いを向けている。そんな中でリュクトワスだけはいつも通りの振る舞いだった。 だけど次に聞こえてきた言葉は、レフラと常に一緒にいるわけではないリュクトワスにとっても初めて聞いたのかもしれない。 「そうか悪かった。少し急ぎの案件が詰まっていたからな、説明を省いてしまっていたな」 さっきまであった冷静さはどこに行ったのか。 ギガイが詫びる姿に唖然としたような表情のまま、せっかくまとめた資料を全て落としてしまっていた。

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