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第10 初めての事 4

もちろん日頃からレフラを取り巻く人達が特別なのだとは分かっている。 ギガイやリュクトワスを除いても、日頃からレフラのそばに居てくれる3人にしても元は警備隊の小隊長だったのだから。視線の先にいる武官を、そんな彼等と比べたわけではない。 ただ純粋に青い顔をしたあの若い武官の未熟さを感じてしまう状況なのだ。 そんな彼の未熟さがやり直すチャンスも得られないまま、切り捨てられることが不安だった。 「ギガイ様……」 声がまだみっともないほど震えていた。 正直に言えば突然向けられたこの武官の威圧は、ギガイが時折周りへ向けるモノよりも暴力的なモノだった。 何が違うのかは分からない。ただ内臓から直接ダメージを得たかのような、ツラさが身体の中に残っていた。 「お前にはまだキツいだろ。無理をしてしゃべるな」 ギガイもそれを知っているのだろう。ギガイへ訴えようとするレフラへ眉を顰めて止めてくる。だけど今でなくては手遅れになるのだ。 レフラはフルフルと小さく首を振ってみせた。 「…いま下される、その処罰は…私でなくても…同じですか……?」 ギガイの唯一として寵愛を受けていることは分かっているからこそ、心配だった。 相手がレフラでなかったとしても、ギガイは同じ処罰を下すのか。この処罰は本当に必要な冷酷さなのか。 「……お前は私の寵妃だぞ」 「ですが、そう、なれば…私は何も…願えなく、なります……」 自分のせいで。 自分が何かをしたい、と言ったワガママのせいで、関わった誰かが過剰に処罰をされてしまうのなら。 レフラはもう何も望めなくなってしまうだろう。 「…ギガイ様…おね、がい…です……」 縋るように見つめれば、ギガイの口から大きな溜息が吐き出される。 「お前は…日頃はろくに強請りもせんのに、また……」 また、という言葉に記憶を辿る。そこで畑を一緒に開墾していたリラン達を前にして、同じような言葉でギガイにレフラの願いを聞いて貰えたことを思い出す。 「もうし、わけ、ございません……」 呆れたようにその頭を、ギガイの手がクシャリと撫でた。 「分かった。これはお前でなかったとしても、同じ処罰だ」 だけど真っ直ぐに見つめ返してくるギガイが、ハッキリと言葉を告げてくれる。そして、それはレフラだけではなく、周りへも伝えているようだった。 「…ありが、とう、ございます……じゃまをして、ごめんなさい…」 あとはこの主が必要だと判断したことならば仕方がない。レフラにとって言える言葉はもうなかった。 目の前がグルグル回っているようだった。正直、言葉を吐いていたことさえツラかったのだ。 張っていた緊張の糸が途切れれば、体勢さえも保てなかった。最後に聞こえた声がもう何かも分からないまま、ひどい目眩と共に意識が暗くなっていった。

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