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第18 移り香に揺れて 5 ※

「噛むな、傷が付くだろう」 顔がすくい上げられて、ギガイの舌先が、レフラの唇を解いていく。応じるように素直に唇を開いたレフラの頭を、ギガイがひと撫でして、差し込んだ舌先を優しく絡めてキスをくれた。 「お前からは、すでに大きなものを貰っている。お前の考えに合わせるならば、私は差し出されたものへ返しているだけだ」 「……私がギガイ様へ差し上げきれたものが、あったでしょうか?」 「あぁ。失うはずだったこの時間を与えたのもお前だ」 それはギガイの過ちに対してのことだろう。 「だがそれ以上に、お前自身だ」 その言葉と共にギガイの指が、レフラの服を開けさせていく。突然のギガイの行為に戸惑いながらも、レフラは黙ってその手を受け入れた。 そのまま上下共に脱がされた服が、パサッとシーツの上に投げ捨てられる。 自分の方から誘ったはずだった。それでもさらけ出された白磁の肌をなぞる視線に、レフラの羞恥と居たたまれなさが煽られる。 「あまり見ないで下さい……」 出来損なった身体には女性のような丸味はなく、男性体と同じようなモノまで付いているのだ。見ていても、そそられるものでは無いだろう。 「なぜだ?」 「……だって、歪な身体でしょう…」 「まさか。 私のために作り上がった身体だ。お前の願いも全てを飲み込んで、御饌として在ることを考えて成長した姿なはずだろう」 まさかこの身体をギガイがそんな風に思っているとは思わなかった。ギガイの言葉に目の奥がドンドン熱くなる。 「色々なモノを飲み込んできたはずだ。それら全てが私にお前が差し出したモノだと思えば、私の方がせっせとお前に返していく必要があるだろうな。それに私へ媚びる者達も、これ以上のモノを差し出せる者など居るわけがないのだから、お前が気に病む必要はない」 分かったか、と目を覗き込まれて、思わず目が潤んでしまったせいだろう。少し苦笑したギガイが眦に唇を寄せて、その涙を吸い取った。 「だから堪えずに、ワガママでも何でも言え。お前は欲がない上に、押し殺しがちで困る」 「いま、与えてもらえている分で、十分です」 「本当に欲がないな。まぁ、良い。甘えることにも、おいおい慣れろ」 そう言ってギガイの手が、レフラの下腹に伸びてくる。指の背だけでレフラの茎を掠めていく刺激はもどかしくて、レフラの茎は固さを増しながら、ピクッピクッと跳ねていた。 「…ギガイ様、するんですか……?」 「そうだな。今の話の様子なら、会談後のアレも、ただの不貞寝だった様子だしな」 あんなに悲しく感じていたあの瞬間も、そんな風に言われて思い返してみれば、確かに不貞寝以外の何でもない。 「……申し訳ありません……」 「あんな風には心配をかけるな」 ギガイが「まったく」と、レフラの身体を持ち上げた。

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