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第42 徒花の毒 7
「茶を入れ終えたのなら、お前達も休憩してこい」
空き時間を確認したレフラの希望で突然取ることになった休憩だった。ギガイの言葉に従って、部屋の中にいた4人がそのまま頭を下げて退室する。
2人だけになった静かな部屋に、パタンという扉が閉まる音が響いた。
「で、お前は何がしたかったんだ?」
その音を待っていた状態なのだ。扉が閉められ2人となったことを確認したギガイが、膝の上に抱え上げたレフラを対面するように座らせた。
ただ休みたいだけだったのなら、こんな回りくどいマネはしないだろう。レフラに関することなのだ。何のためにこんな方法を取ったのか、気にならないはずはない。
それでもこの状況まで問い詰めなかったのは、2人きりでなければ言いにくい事でもあるのだろうと、判断したからのことだった。
さて吐いてもらおうか、とギガイがレフラの視線を捕らえた。そんな自分の狭量さに正直呆れる気持ちもある。だがレフラのことに関してだけは、ほんのわずかな隠し事でも、受け入れ難いのだから仕方がない。
それなのに、改めて尋ねた質問にさえ返ってきたのは。
「えっ? 休憩のお時間を本当に頂きたかっただけですよ」
そんな答えだけだった。
表情をジッと窺い見ても、確かに嘘を言っているようには見えない。だがそんな答えに納得しろと言う方が無理があるような状況なのだ。
(また何の隠し事をしようとしているのか……)
これまでのことを思い出しても、どうしてもそんな風に思ってしまっていた。
しかも眉を顰めたギガイの上でもぞもぞと身じろぐレフラがいったい何をしているのか。黙って見ていたギガイの腕を腰の辺りから外してくる。訝しげに向けた視線も気に留めずに、そのままスルッと滑るように膝の上から降りてしまった。
疚しいことがないのなら、距離を取るような必要があるのか。
そのままギガイから多少のスペースを開けて横へ座り直したレフラへ「おい」と、不満の声をあげかける。
だがそれよりも一瞬早く、伸びてきたレフラの指がギガイの服を引っ張った。
「……あまり、寝心地は良くないかもしれないんですけど……でも少しは身体が休まると思うんです……」
緊張と少しの照れと、心配が混じり合ったような表情だった。
「……どうした、突然???」
レフラが何を意図しているのか分からない訳じゃない。だけど突然おかしな休憩を取ってまで、やりたかった事なのか。
レフラの性格を考えれば、行為の意味がやっぱりギガイには分からなかった。
「だってギガイ様、お疲れですから……」
「???」
疲れていないか、と言われれば、祭りに向けた連日の状況に疲れを感じてはいた。だがそんな様子を見せた覚えもなければ、一言も話題に出した覚えもない。
「なぜそう思ったんだ???」
「それは教えられません。だって教えてしまったら、ギガイ様も次から隠してしまうでしょう? そうなったら困りますから」
「それをお前が言うのか、まったく……」
ギガイが呆れて、レフラの言葉に苦笑いを浮かべた。本人もそうやって指摘をされるだけの心当たりはあるのだろう。
「すみません」
小さく苦笑混じりの謝罪の言葉が返ってくる。
「でも日々ご一緒をして、様子に気付くのは私だって同じですよ。だから、少しだけでもお休みをして欲しいんです」
そう言ったレフラの声は、心配げな声だった。
もう1度ツンツンとレフラの指がギガイの服を引っ張ってくる。その指に従うには躊躇いがあった。それでも引かれるままに、ギガイはそっと身体を倒した。
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