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第69 雨季の終わり 1

「うぅ~!!」 寝台にもたれるギガイに横抱きにされながら、レフラは抗議の唸り声を上げた。 「どうした? 怒ってるのか?」 言ってしまいたいことは、いっぱいある。でも嗄れた喉では、それさえも侭ならないのが、よけいにレフラを腹立たせた。 「ダメならば、ちゃんとあの言葉を使え、と言っていたはずだろう?」 確かに行為の最中にも、何度も聞いた言葉だった。言えるタイミングもある中で、言わないと決めたのは自分だったから。昨日のことに対して、ギガイを責めるのはおかしいと、分かっている。それでも。 「…………んて」 「なんだ?」 「いれ、た……ま……な……て! ゴホッゴホッ!!」 後ろにギガイのモノを入れたまま眠ってしまうなんて、それはいくらなんでも酷いとレフラは思っていた。 起きたてのまだボンヤリとした頭でそのことに気付いた瞬間に、どれだけ驚いて、血の気が引いていったと思うのか。 (ギガイ様は、全く分かっていらっしゃらないんだ!) 思い出せば、恥ずかしいやら、腹立たしいやら。顔も熱くなって、握る拳もプルプルと震えてしまう。 だって目覚めた時なんかは。 (どうして眠っているはずなのに、まだ固いままなんですか……!?) 現実逃避のようにそんなことを考えながら、どうにかギガイの屹立を、後ろからそっと引き抜こうとして必死になったのだ。 気を失うぐらいに抱かれ続けた身体は、まだだいぶヘロヘロだった。それなのに、こんなすぐに再開できそうな状態でギガイが目覚めてしまったら、きっと今日一日を無事に過ごす気力も体力も、根こそぎ奪われてしまう。 そうなったら、情事の後の雰囲気を残していなくたって、レフラは絶対にグッタリとしてしまっただろう。あの執務室でいつも一緒に過ごす人達には、ギガイの過保護っぷりは、よく知られているのだから。そんなギガイが不調のレフラを前にして、特に慌てずいつも通りに過ごしているなら、原因はこの主だと簡単に予想されるはずなのだ。 (そうなったら、どんな顔をしてみなさんの前で過ごしたら良いんですか……) 明らかに抱き潰されました。そんなことが伝わる姿で過ごすなんて。考えただけで恥ずかしすぎて、少し泣きたくなるぐらいだった。 どうにかギガイを起こさずに、コレを引き抜いてしまえないか。レフラは腰を引きながら、少しずつ身体を引き上げてみる。 ズルリ。 擦れる感触に上がりそうな声を、とっさに口を押さえて押し殺した。それでもどうにかできそうな状況に、レフラは肌を赤く染めながら、少しずつ少しずつギガイのモノを抜いていった。

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