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第70 雨季の終わり 2

擦れる感触からの疼きも、喘ぎも堪えて。ゆっくりとした進みのせいで、薄らと汗で肌が濡れていた。でも、その苦労のかいもあって、あと少しで引き抜ける所まで、どうにか進めきれたはずだった。 1番太い亀頭の返しに縁を捲られてしまいながらも、もうここさえ過ぎれば、どうにか抜きさることができるのだから、レフラは最後の気力を振り絞っていたのだ。それなのに。 いつから目を覚ましていたのか。 突然掴まれた掌に、一気に抜けかけたモノを引き戻されて、ヒクついていた内壁をまた奥まで穿たれてしまう。 気配に敏いギガイなのだから。遅くても、レフラが起きた時にわずかに身体を強ばらせた頃には、しっかりと目を覚ましていたのかもしれない。きっとその上で、レフラの困った様子を楽しんで見ていたのだろう。 そんなギガイに文句を言って、どうにか制止したかった。それなのに結局は。思わず上げた嬌声で、何も伝えることができないまま、朝から抱かれてしまう羽目になったのだ。 さらに、いつもなら気を失っている間に終えてもらえていた後処理を、浴室で受けたせいで、またそこでもさんざん弄られて、何度もイカされてしまったことも腹が立つ。 あんなに昨日頑張ったことを思えば、さすがに苦情の1つだって言いたかった。それなのに、やっぱり振り絞った声は、掠れてろくに音になっていない。精一杯の文句さえ、ほとんど意味が伝わらないことが悔しくて仕方がない。 そのうえ酷使されすぎた喉は、たったこれだけでも|咽《む》せてしまう。 「大声を出すと治らないぞ」 誰のせいだと思っているのか。飄々とそんなことを言い放つギガイをレフラが、咳き込んで涙を浮かべたままジトッと睨む。 だけどそんなレフラの表情さえ、ギガイは機嫌良さそうな顔を向けるだけだった。 「ほら、顔をこっちに向けろ」 腹立たしい表情に、そっぽを向こうとしたレフラの顎先を、ギガイの指先が捕らえてしまう。 脇机からグラスを取ったギガイが、そのまま中身を口に含み、重ねた唇からレフラの口腔内へ流し込んできた。 いつの間に手配していたのだろう。覚えのある苦みは、喉を含めた粘膜の炎症に効くと習った、薬草茶の味がした。 逃す様子のないギガイの指に諦めて、それを大人しく嚥下する。あまり美味しいものではないその薬草茶を、何回かに分けて与えられ、唇が離れる頃には口の中に残った苦さに、レフラの眉はヘニョっと垂れてしまっていた。 「次はこれだ。口直しになるだろう」 何かを差し出したギガイの指に、素直にカパッと口を開けば、その中に、薬が練り込まれたカナンの蜜玉が放り込まれた。

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