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「う、く……ッ」  シュンの喉がのけぞる。苦しいのかな、苦しいよね、でもごめん、止められない。なんだコレ。なんだコレ!  ぐ、ぐ、と少しずつ侵入を試みる。ぐずぐずに溶けて濡れたそこはしっかりと俺のものを包み込み、それでいて奥へ、奥へと促すように収縮している。温かくて、熱くて、体の一番深いところでシュンを感じる。 「シュンの中、気持ちいい……」 「も、もう、恥ずか、っしい……」  羞恥に顔を背けても、それによって晒された首筋を攻めさせてもらう。舌でつつ……となぞれば、俺のものを締め付ける内壁がヒクヒクと痙攣した。う、えろい。えろすぎです! 「ねえ俺やばい……動いて、いい?」 「……いいよ」  吐息交じりに囁かれたその低温の、なんと官能的なことでしょう。ゾクリ、と背筋が震えるのを感じながら、シュンの綺麗な脚を高く抱え上げた。 「お、お、お、俺、童貞だから、うまく動けないかもしれないけどっ」 「もうっ……早く、してえ」 「えっ?」 「……我慢できない……」  どうしよう。今日おれはあたまがばくはつしてしぬのかもしれない。  非リア充として生きてきた俺はこんな経験などもちろんなく、やり方なんてよく分からない。これまでに読み込んできた数多の同人誌という教科書を思い起こそうとするが、何ひとつ浮かばない。だって、これは現実だ。俺の一物を包み込んでくれているシュンはリアルの存在だ。俺が見るべきは、目の前の、可愛い可愛い俺だけのシュンだ。  本能に従って、腰を前後に動かす。ややゆっくりだがその分、湿った内壁がしっかりと俺のものを擦り上げるのを感じることができて、何というか物凄い気持ちいい。 「んっ、ああ、は、ぁんっ」  シュンは苦しいのか気持ちいいのか分からない顔でヒィヒィと声を上げている。どっちもかなあ。眉を八の字にして目をぎゅっと瞑ってはいるけれど、薄く開かれた口から洩れる吐息はすごくいやらしいし、何より二人の体に挟まれて微妙に擦られているそれは、さっきから一度も萎えていない。 「はぁ、ハァ、シュン、気持ち、いい?」  ゆるゆると揺さぶりながら聞いてやれば、シュンは顔は横を向いたまま、閉じていた目を開けて視線だけをこっちに寄越した。その表情、反則です。白い頬をピンクにして泣きそうな顔をして、そんな風に少女のようにあどけないのに、目だけは熱っぽく快楽を求める、生身の男のそれだ。そんなに俺を煽り立てて、これ以上どうしてくれるのだろう。  表情だけでこんなに頭が沸騰しちゃうのに、そこにダメ押しとばかりに掠れた声がぽそりとこぼす。 「きもち、いい……」  溶けた。脳が溶けた。むしろ蒸発したかもしれない。固体から一気に気体になる現象を何と言うんだったか。一応理系なはずなのにそんな基礎用語も出てこない。だって頭が蒸発しているんだもの。 「苦しくない? 大丈夫?」 「苦しいけど、らいじょうぶ、きもちいい」  ズン、とシュンの中にある俺のものが一気に質量を増す。わざとなのかな、分かってやってるのかなこの子は。  大分俺のほうも慣れてきた。より速く、かつ深く熱を打ち付ける。ベッドがキシキシ鳴るのが本当にいやらしくて、その音に乗っかるシュンの声や吐息や、あそこが擦れる粘着質な音やら。もう全部録音して何度もエンドレスリピートしたい。 「ん、あっ、はぁ、う……」  シュンは襲い来る快感をやり過ごそうとしているのか、右を向いたり左を向いたり、体を何度も捩ったりしている。そのたびにシュンの左胸で黒と青の蝶が揺れる。さっきまでちょっと怖いなと思っていたそれが、なんだか急に艶めかしく見えてきた。  ていうか俺さっきまで童貞だったのに勢いで卒業しちゃったとか、そもそも俺もシュンも男だったわとか、そういえば蹴られた腹が痛えとか、今更ながらに色々思い浮かぶけど全部一瞬でどうでもよくなる。気持ちいい、可愛い、いとおしい、シュンがほしい。 「シュン、ごめ、ずっとこうして、いたいんだけど、さっ、俺もう、イクかも……」 「いいよ、好きな、とこでいって……」  くしゃりと笑ってシュンは俺の頬を両手で挟み込む。  その笑顔を俺は心のアルバムの一番大事なページに深く深く刻み込んだ。一生覚えておきたい。俺に絵心があれば百万枚くらい今の顔の絵を描く。そのくらい、可愛くて、綺麗で、いやらしくて、優しい顔だった。 「は、ハァ、シュン、すき、好きだ……ッ」 「ひぁッ、あ、あっ、んんんっ!」  体を深く落として胸と胸をぴったりと重ねる。汗ばんだ肌も全く不快ではない。シュンの顔の横に自分の顔をうずめて、耳元でかわいい声を、吐息を、堪能しながら一番深いところに激しく欲望を打ち付けた。  体中を暴れまわる快感の波がすごすぎて、もう訳が分からない。ああ、このままシュンの中に欲望を吐き出して全て自分の色に染めてしまいたい。シュンなんて俺なしでいられない体になればいい。そんなキモイことを考えるが、そのときピコンと、俺のダメな頭に電球が灯る。そして今の俺にはその欲望を抑える理性は残ってはいない。 「シュン、シュン、ねえ」 「ふ、あっ、な、なに、何い……」 「その、さあ、顔、顔に出していい?」 「えっ?」  おい一瞬で声を素に戻すな。ああキモいよねえ、やっぱり。でもごめん、今の俺は自分の欲望に忠実百パーセントなので。 「一応目ぇつぶっててね」 「え、ちょっと、あっ、あっあっああっ!」  反論ができないようにその深いところを責め立てる。俺も余裕がないけれど、シュンだってもうイキそうなんだろう? 「ああ、それと、名前。なまえ呼んで」 「ん、あっ、す、周藤、くん……?」 「下の名前、ッ、俺のこと貴也って呼ぶやついないし、せせせセックスのときだけ名前よぶとか、特別感あって、いいじゃん……?」  憧れていたシチュエーション全部やりたい。二次元を全てシュンで塗り替えたい。おねがい、と耳朶を食みながら耳に直接吹き込んでやると、濡れた唇が小さく「……たかや」と囁いた。  脳内プレイヤーに永久保存しました。 「はあ、あっ、シュン、春、イクね、春も、いって」 「んっ、んあっ、たか、や、貴也っ、好き、すきい」  もうだめだ、というギリギリで中から自分のものを引き抜く。粘っこい粘液が糸を引くのにも構わずシュンの胸のあたりに乗り上げると、真赤になった顔に向かって全力で欲望を放った。シュンは大きな目をしっかり開いて俺の顔をまっすぐ見ている。目を瞑って、と言いたかったが間に合わなかった。可愛くて綺麗でえろくて天使な顔に、男の汚い白濁の欲望がびちゃりと降りかかる。 「あ、あ、ああッ」  その瞬間、シュンの体も大きく痙攣する。引き抜いた刺激で達したらしい。俺がシュンをイカせたのだと思うと、感慨深いものがある。脇に手を入れて助け起こし、ぎゅっと抱き締めた。 「ハァ、はぁ……シュン、好き」  もう一度確かめるように言って、赤く熟れた耳朶を甘噛みする。んっ、とシュンの喉から漏れる小さな声がたまらない。  二人して途方もない脱力感と快感の残滓に酔い痴れ、重なったまま布団に倒れ込む。真横にある大好きな顔には俺の、せせせ精液がべっとりとついていて、もうどうしようもないほどいやらしい。怒られるかなあ、でも後悔はない。だってこんなシュンが見たかったんだから。  遠慮のない目でその顔をじっと見ていれば、シュンがクスリと笑った。 「見すぎ」 「だって大好きなんだもん」  なんかすごかったね、と言ってお互い笑った。あーあ、これでギリギリを保っていた「友達」の関係は崩壊だなあ。これからはもっともっとシュンがほしくなる。もっともっとシュンを好きになる。 「俺も、……周藤くんの顔、好き」 「えっ顔?」 「ああ顔だけが好きってわけじゃないけど」  す、と白い手が伸びてきて、俺の頬に触れる。シュンの手が冷たいと思ったけれど、そうじゃない。俺の顔が熱いんだ。 「口を開くと変なことばかり言ってるのに、それを言う顔がいちいち格好いいんだもん。ずっと見ていて飽きないっていうか」 「えええ……」  そんな風に観察されてたなんて恥ずかしいっ。まあ、いいか。シュンに好きって言ってもらえるならこの顔でよかった。この見た目のせいで苦労することも多かったけど、得したことのほうが大きいのかな。  うんうん、と今この瞬間の脱力感と幸せを噛み締めていれば、シュンの顔がうっとりと艶を帯びる。そして。 「周藤くんは基本的に格好いいけど、今のイキ顔が一番恰好よかった……」  そんなことを熱っぽく言う。ヒイ、と変な声が喉の奥か出てしまった。このやろう、だからあんなにもまっすぐ見てきたのか。収まったはずの熱が顔に再集結する。きっと今の俺は顔が真っ赤だ。 「シュンもなかなか変態だね……」 「うん、そうみたい」  こんなに幸せなら変態でいいや、というシュンを全力で抱き締めた。素肌同士が触れ合うのが気持ちいい。頬に降ってくる小さなキスがいとおしい。  二次元じゃない。画面のこちら側にいる。触れることができる。シュンはシュンだ、誰に似てもいないし誰に重ねることもない。  今までは画面の向こうに行きたいとか、なんで俺は三次元に生まれてしまったんだとか思って生きてきた。今は心から言える。俺三次元に生きててよかった。シュンと出会えてよかった。

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