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三
午後三時になると、千坂くんは仕事の手を止めて伸びをする。
つられて背伸びすると、千坂くんが社長に声をかけた。
「社長、今日終業式ですよね。あとのことはいいので、もう帰って下さい」
「は?」
社長がなにか言う前に、俺は驚きの声を上げた。
「どこの終業式?」
「社長の息子の学校だ」
「社長息子いるの?!」
社長は照れくさそうに笑う。
「小学校三年生の男の子がいるんだよ。母親がいなくて感受性の強い子だから、学期の終わり、ちょっと心配だったんだ」
あぁなんか、深い事情があるのかな。
「にしても、社長はいくつなの?」
「三十四だよ」
「ひとまわり上なのか! ……でももっと歳上だと思ってたし、けど見た目は若く見えるし、なんだろね?」
千坂くんにそう聞いたら、失礼なことは言ってないはずなのにまた怒られた。
社長は千坂くんに感謝しながら、残りの仕事は家でやると告げてそのあとすぐに帰っていった。
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