9 / 152

第一章・9

 そんな出会いを振り返りながら、衛は温室へ入った。  初めてここに立ち入った日も、こんな風に穏やかな晴れの日だったっけ。  季節は巡り、また春を迎えつつある温室は暖かく、水と緑の香りに満ちていた。  色とりどりのランに、大きく育ったヤシ類。  斑入り葉が美しいジンジャーやドラセナの仲間に、葉の形の面白いサトイモ科の植物たち。  どれも衛が3年もの間、手塩にかけて育て上げた温室の住人たちだ。  いや、俺だけの力では、とてもここまで美しく育たなかっただろう、と思う。  優秀なアシスタントのおかげだ。

ともだちにシェアしよう!