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第一章・10
そしてその最奥には、やはり革のソファがあの時のままにある。
そこに眠る、人の姿をした猫もまた、あの時のまま。
「陽、起きろ」
「ぅん……」
寝ぼけ眼で瞼をこするその姿は、まさしく猫だ。
このところ、ご機嫌斜めではあるのだが。
「風邪をひくぞ」
そっと優しくかけられた衛の声にも、陽は噛みついてくる。
「せっかく、いい夢見てたのに!」
「どんな夢だ。聞かせてくれないか?」
「……ヤだ」
ぷぃっとそっぽを向いてしまう陽だが、彼は彼でこの困り顔の生物教師に言いたいことはあるのだ。
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