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第一章・13

「衛先生は、僕なんか早く卒業すればいいと思ってるんだ。早く出ていけ、って考えてるんだ」 「どこをどう突っつけば、そういう発想が出てくるんだ?」  進学もしない、就職もしないとごねて衛を困らせた、わがまま気ままな猫。  しかし3年前から温室をせっせと再建する彼の横にいては、伸びをしたり縮んだり、減らず口を叩いたりとそれなりに付いてきていた陽は、気がつくと植物にやたら詳しくなっていた。  2年生の夏を迎える頃に、ふと陽の方から衛に話しかけてきたのだ。  いつもなら、校内の廊下で出会っても知らんぷりを決め込む彼には珍しい事だ、と衛は軽く驚いた。 「ね、衛先生。そろそろランには遮光をしてあげなきゃいけないんじゃないかな?」 「ん? あぁ、そうだな。ダイオネットにするか、ラスにするか……」 「ネットがいい。ラスは重くて、僕には動かせないもん」  おや、と衛は気付いた。  陽のやつ、手伝ってくれるつもりなのか? しかも、こんな専門知識まで仕入れて。

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