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第一章・19

「衛先生。このアルピニアなら、こっちのアロカシアとは別に植えた方がいい」 「なぜだ? どちらも低温には弱い。採光の強いここに両方植えた方が、手入れもやりやすいだろう」 「うん。でも、このふたつが一緒だと華やか過ぎるよ。離して植えて、全体のアクセントにした方が僕は好きだな」 「解かった。じゃあアルピニアは、低温に強い品種を探すか」  単なる知識だけでなく、その感性でもって温室をコーディネイトするセンスも抜群だ。  衛は、陽の内に秘めた才能を見出した。  そして、伸ばした。  植物に水を与え、肥料を施し、日光を注ぐように、このちょっぴり世の中を疎んでいる猫に努力を、工夫を、そして達成感を味わわせ続けた。

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