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第一章・20

「衛先生、お腹すいた。晩ごはん、奢って」 「おやつから食事に格上げか。よく動いて、腹が減ったか」 「先生は安月給だから、ファーストフードでいいよ」 「いらん気遣いを」  出会った大人に、やたら豪勢なディナーをご馳走された事など何度でもある陽だったが、衛の奢ってくれるハンバーガーは、どんなフルコースより美味しかった。  この後は、おやすみなさいと別れてしまうと解かっていても、いや、解かっているからこそ、共に食事をする時間をいっそう大切に感じた。  必ず、自宅のマンションまで送ってくれる衛。  だけど決して、その敷居を跨いではくれないのだ。 「じゃね、先生」 「早く寝ろよ」  学校へ行くことが、こんなにも楽しみになるなんて。  衛の背中が角を曲がってしまうまで、陽はいつも見送っていた。

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