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第一章・22
「衛先生は、僕なんか早く卒業すればいいと思ってるんだ。早く出ていけ、って考えてるんだ」
「どこをどう突っつけば、そういう発想が出てくるんだ?」
また、思ってもいないことを、この口が勝手に喚き散らす。
卒業したくない。
大好きな衛先生に会えなくなるのが淋しい、と素直に言えればいいのに。
「卒業までに、お前のクラスで授業ができるのはあと1回だけだ。最後の授業は、ちゃんと……」
「衛先生の馬鹿ッ!」
がばとソファから跳ね起き、あっという間に陽は温室から出て行ってしまった。
心配に感じた衛はその夜、陽の家まで足を運んでみたがベルを鳴らしても誰も出ず、しばらくその場で待っていても明かりは灯らなかった。
そして、最後の授業。
陽は、やはり席についてはいなかった。
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