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第二章・卒業と愛情と
卒業式当日。
講堂へ入場する直前に、陽はだらしなく緩ませていたネクタイを、衛の手によって締め直された。
「せっかくの晴れ舞台だ。胸を張って行け」
「……ん」
言葉が喉に詰まって出てこない。
顔もまともに見られない。
何か話すと、衛の顔を見ると、もうその場で涙が溢れてきそうだったから。
おごそかに、式典は過ぎてゆく。
校長の祝辞も、3年生代表の感謝の言葉も、全く耳に入らない。
頭の中は、眼の前を過ぎゆく自分の卒業式などではなく、3年間を共に過ごした衛との思い出だけだった。
衛のことで、頭も胸もいっぱいだった。
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