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第二章・7
ボタンを手にしても、陽は嬉しそうではなかった。
うつむき、黙ってしまった彼の横に衛が座ると、古いソファがぎしりと鳴った。
「僕は。その、悪い子だったかな?」
「ぅん?」
「身勝手で、だらしなくて、わがままで……。衛先生は、本当は僕なんか嫌いだったんじゃないの?」
突然しおらしくなってしまった陽に戸惑いつつも、衛は思わず吹き出した。
「そんなことを心配していたのか? 何を今更。お前が我儘じゃなかった事など無い……」
バッチィイイイインンンンン!
言い終わる前に両手挟みビンタをかまされ、衛の耳はキンキンと鳴り響いた。
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