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第二章・9

 衛は、陽の耳元で囁いた。 「俺も、お前のボタンが欲しい。貰ってもいいか?」  耳にかかる吐息に、陽はぞくりと震えた。  甘い、衛先生の声。  これまでに聞いたことのない囁きが、全身に巡った。  黙って、一つこくりと頷くと、衛は耳元に唇を置いたまま陽のブレザーを脱がせ、手探りでシャツのボタンに指を掛けた。  ぷちん、ぷちん、ぷちん、と、上から順に丁寧にちぎってゆく。  ボタンがちぎられる毎に、衛の大きな掌ではだけられてゆく肌。  彼が、何をしようと考えているか解からない陽ではなかった。  それでもじっと動かず、まるで初めてのように身を固くして震えていた。  やがて全てのボタンをちぎってしまうと、衛は耳元でさまよわせていた唇を、ようやく陽の顔に近づけて来てくれた。

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