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第二章・25
「ここは変わらないな」
陽は日光にきらきらと光る、大型ガラス温室を見上げた。
懐かしい温室。
僕と衛先生とで創り上げた、植物たちのパラダイス。
そしてそれは、陽の楽園でもあったのだ。
温室と、衛と離れてから、改めて思い知らされた。
ここでの3年間がなければ、今の自分はなかった、と。
扉を開け、中へ入った。
温かな空気はやはり水と緑の香りで溢れており、陽は深く息を吸った。
ひとつひとつ、確かめながら奥へと進む。
どの植物たちも元気で、お帰り、と話しかけてくるかのようだ。
そして、一番奥。
そこには、やはりソファがあった。
あの時のまま、革のソファが。
「あれ?」
だがそれは、やたら新しかった。
まだ捻くれた1年生の時に、粗大ゴミ置き場から引きずってきた、あの古びたソファではない。
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