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第二章・29

「中央の、結構賑やかな土地柄の高校なんだ。繁華街やオフィス街もあるし、周辺にはベッドタウンもある。だから、その、な。就職するには、もってこいの場所だと思うんだが……」 「え?」 「アパートでなく、思いきって一戸建てを借りた。部屋はたくさんあるし、庭も結構広いぞ。お前も、何か好きなものを植えるといい」 「衛先生、まさか」  こほん、と改まってひとつ咳をすると、衛はやけに緊張した表情でこう言った。 「一緒に暮らさないか、俺と」 「先生……」  黙って、その胸に飛び込んだ。  言葉はなくとも、返事の代わりには充分だった。

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