58 / 152
第三章・6
「布団も……?」
ああ、と事もなげに衛は返事をよこす。
「羽根布団だ。軽くて温かい。たぶん、高価なものだろうな。ありがたいことだ」
むうぅううう~ッ! と、陽の頭に血が昇って行った。
「この家、イヤだッ! 引っ越そう、衛!」
「何ィッ!?」
二人押したり引いたりしながら話してみると、陽の言い分はこうだった。
「知らないヒトがエッチした布団で寝るなんて、絶対ヤだ! なンか、気持ち悪い!」
「贅沢言うな。掘り出し物の物件だったんだぞ」
「でも、嫌だ!」
最終的に、布団だけは買い替える、という結果に落ち着いて、衛は汗を拭いていた。
ともだちにシェアしよう!