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第三章・8
陽の職場は、中央駅周辺の再開発時に造られたショッピングモールの中にあった。
有名な大手チェーンの傘下ではないが、地元で良く知られた店名に客は惹かれてやって来る。
普段よりちょっぴり奮発した買い物をした日には財布の紐も緩み、花でも買って帰ろうか、という心理になるのだろう。
また、そのすぐ近くに多目的ホールがある。
客席数2000人のプロセニアム方式大ホールを始め、イベントホールに会議室、茶室から展望レストランまで入った、文化の中心地だ。
演奏会や個展が開かれる時は、ここで花を買ってくれる人が多いし、駅周辺にはブライダルホールを抱えたホテルも建っている。
区内でも有数の、花の需要を抱える地域だ。
そんな花屋に、陽は就職した。
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