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第三章・10

 ちょうど湯呑みにお茶を注いだところで、衛は戻ってきた。  渡したいものがある、と言っていた通り、手に何か持っている。 「はい、衛。お茶だよ」 「うん、すまんな」  衛はお茶を口にする前に、手にしたものを陽に差し出した。 「何、これ」 「預金通帳だ。名義はお前にしてある。大事に使えよ」  通帳、って、と陽はぽかんとしてページを繰った。  真新しい口座には、すでに記帳がしてある。  そしてその桁数に、ギョッとした。

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