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第三章・16

 ことん、と寝入ってしまった気まぐれな猫。  柔らかな髪が衛の肌にさわりと触れるたびに、ぞくぞくと性欲が湧きあがってくる。  しかし、寝ているところを犯すほど、自分は身勝手な男ではない。 「蛇の生殺し、というやつか……」  はあ、と深く息をついて、衛も瞼を閉じた。  明日の朝も早い。  陽より早起きして食事の用意をしなくては、彼は朝まで無食で出勤しかねない。  トマトのオムレツに、豆のサラダ。  カフェ・オレとハムサンド。  朝食のメニューを考えながら、衛もまた眠りに就いた。

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