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第四章・5

 あぁ、女鹿山入口、か、とそこでようやく衛は合点した。 「いいか、陽。よく聞け。まずは職場に連絡しろ。理由は何でもいい。腹痛やら頭痛やら、とにかくそれらしいことを言って、出勤が遅れる事を伝えるんだ。いいな?」 『うん…… (ノ_-。)』 「今から俺が、車で迎えに行ってやる。そこを動くんじゃないぞ!?」 『解かった…… (ノ△・。)』  じゃあ、切るぞ、と衛は電話を終えた。  さて、俺の方はどうするか。  教室へ戻り、笑いをこらえている生徒たちを前に、衛はひとつ咳をした。  教卓に両腕をつき、生徒を見渡す。  嘘をつく事は簡単だ。  さっき陽に言ったように、腹痛、頭痛を訴えて、自習にしてしまえばいい事だ。  しかし衛は、私情で生徒に嘘を言えない気性だった。  大人相手になら、いくらでも都合をつける。  だが、まだ成長過程にある子どもたちを誤魔化す自分は、許せなかった。

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