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第四章・8
あとに残された生徒たちは、しばらくぼんやりといろんなことを考えていた。
好きな人のために、何もかもかなぐり捨てて走ってゆく。
これから、俺達にも、私たちにも、そういう出来事が起こりうるのだろうか。
そうしたら、やっぱり衛先生みたいに行動できるだろうか。
生物の授業はなくなってしまったが、何か別の重要な、難しいことを教えてもらったような気がする。
生徒たちは皆、そのような考えに帰着した。
そして。
さて、この後どうしよう。
大人しいのは5分程度で、すぐに騒ぎ出してしまう自信は満々だ。
でも、そうなれば不審に思った隣の教室から先生がやってくる。
衛先生が、困った立場に置かれてしまう。
誰からともなく教科書を一人1ページずつ音読し始めた。
一人が読み終われば、次。
次が終われば、また一人。
そうやって、生徒たちは生まれて初めて自分たちの力で本当の『自習』をした。
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