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第四章・9

 主任には、父が狭心症で急に倒れた、と堂々と大法螺を吹いた衛。  本日はこのまま直帰します、と丸一日の有給を宣言し、急いで車に乗った。  頻繁に車線変更をしては、少しでも空いた路を走った。  いつもなら止まる黄色の信号も、構わずブッ飛ばした。  混雑する界隈を抜け、だんだんと道路を走る自動車がまばらになってきた。  郊外の、まだ開発の進んでいない田舎道。  そこをしばらく走った衛の車は、目指す場所へとたどり着いた。

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