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第四章・10
女鹿山入口。
バスがターンするための広い空き地が設けられ、お義理程度の停留所が淋しく置いてある。
バスセンターもなく、日よけもなく、ベンチすらないがらんとした場所に、陽がぽつんと立っていた。
車のドアも開け放ったまま、衛は陽の元へと駆け寄った。
「衛!」
陽もその姿に気づき、こちらへ思いきり駆けてくる。
「大丈夫か、陽!」
しっかりと抱き合う二人……、ではなく!
バッチィイイイインンンンン!
陽の、両手挟みビンタ!
これは久しぶりだ、と衛の耳はキンキンと鳴り響いた。
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