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第四章・11

「バカ! 衛の馬鹿! バカ馬鹿バカ馬鹿バカァア!」  胸にすがりついて、ぐすぐすと泣きじゃくる陽の背中を、衛は優しく何度も撫でさすった。 「ああ、俺が悪かった。すまない」  そう。  空があんなに青いのも、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんな俺が悪いのだ。  ひとしきり泣いて、ようやく落ち着いた陽に、衛は彼の無事の次に心配していたことを尋ねた。 「会社には、連絡したか? ちゃんと、遅れることを知らせたか?」 「うん。鼻血が止まらなくなったから、今日一日お休みします、って言った」  何ィ!? 「もうダメ、限界。衛と一緒にいたいんだ。今日一日、ずっと傍にいたい!」 「俺も、そう思ってたところだ」  直帰する、と言っておいてよかった、と衛は考え、今度こそ陽としばらく抱き合っていた。  互いのぬくもりを、確かめ合っていた。

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