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第四章・13
「イカ! イカのリングフライ、レストランで食べたことあるけど、あんまりおいしくなかったよ~」
「ヤリイカは春先によく獲れる。刺身にすると、歯ごたえと旨味が格別だ。とろけるようにうまいぞ」
「お刺身? イカをお刺身にするの? 自分で!?」
見ていると、衛は慣れた手つきでぬるりとしたイカを手早くさばいてゆく。
ぎょろりとこちらを睨んでくるイカの大きな目を見ないようにしながら、陽はその鮮やかな手際に夢中になった。
「ゲソとワタは、ホイル焼きにしよう。酒がすすむぞ。陽、ネギを少し刻んでくれ」
「え!? ね、ねぎ!?」
どうしよう。ネギなんて切ったことない。
というか、包丁を持ったことすら、記憶にほとんどない。
野菜用の包丁とまな板を前に、ネギを手にして呆然とする陽に笑顔を向けると、衛はその手を取った。
「教えてやるから。いいか? まずはこうやって適当な長さに切って。む、初めてなら輪ゴムで止めたほうが切りやすいかな」
衛に手を添えてもらいながら、陽は恐る恐るネギを刻んだ。
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